2009年02月12日

Mさん話「ガンダムとエヴァC音楽と切り貼り」(ver.1.1)

Mさん話「ガンダムとエヴァB続・スポンサー」の続き。
(http://cost-off.seesaa.net/article/113203782.html


Mさん話「ガンダムとエヴァC音楽と切り貼り」

「スポンサーでもゲームとかCD関係なら内容に口出さないんじゃないですか?
 ゲームは放送が観て、それを元に作るんでしょうから。」
「ゲームは完全に後からだね。口は出さないね。
 CDは音楽プロデューサーがいて、オープニング(以下、OP)とエンディング(以下、ED)、それと挿入歌で今度売り出したいミュージシャンの曲を持ってくるんだよ。今度のOPはこの曲でお願いしますって。」

「もう上のほうでどの曲になるか決まってるんですね。
 確かにOPでかかった曲とかはヒットしてるの多いですね。
 OPとEDの曲を集めたコンプリートCDとかも出てますよ。」

「視聴率だけでなくて、今までそのバンドを知らない客層もOPでその曲聞くわけだから、すごい宣伝効果だよ。
 そのためにスポンサーになってるわけだから、いくら監督だからって好きなミュージシャンの曲を勝手にOPに決めたりできないよ。
 監督が知り合いのミュージシャンに頼まれてOPに使うよって口約束しても、スポンサーや音楽プロデューサーの頭越しだから簡単には通らないよ。」

「お金が動いてるから、監督でも権限ないんですね。監督だからって何でもできるわけじゃないんですね。
 バンドやってた友達も「曲が売れるかは宣伝次第だ、8割が宣伝費用で決まる」って言ってました。宣伝費かけて勝負に出て駄目ならすぐ下(マイナー)に落とされるって。」

「今は大体1クール(13週)でOPとED変えるから、絵も新しいの作らなきゃならないし、大変だよ。昔はそんなにちょこちょこ変えなかったからね。」
「1stガンダムは最後までOPもEDも変わりませんでしたね。
 でもOPって1分半から2分ぐらいだから、簡単にできるんじゃないですか?」
冗談じゃないよwOP作るのって大変だよ。1本作るのと同じくらい手間かかるよ。
 毎回流れるからできたらうまい人に任したいし、本編に編集だけの回入れてもうまい人を回したいと思ってるよ。」
「えっ、そうなんですか。確かに作品の顔ですけど、短いからパッパとできると思ってたんですが。
 そういえば、OPだけでOP絵コンテとかOPのスタッフだけでテロップに名前出ますね。」
「OPを作ってる人はかなりうまい人だよ。視聴率や曲の売れ行きにもかかわるしね。
 OPが良かったら、中も見てみようって気になるじゃない。
 でも、OP作る手間は本編一本作るのと同じぐらいだから、1年のシリーズで1クールごとにOPを作るとしたら、実際4本分の負担になるよ。
 時間と予算同じなのに、1年50話が54話分作る労力がかかるんだよ。
 それにうまい人をOPに回すと本編はどうしてもきつくなるし。」

「そういえば、エウレカ(『交響詩篇エウレカセブン』)で第3クールのOPは、曲はいいんですけど作画が崩れてて未だに「手抜きOP」って言われてますよ。
 展開やメカの動きはともかく、人物が本編でも絵が崩れた時のレベルなんですよ。
 でも、曲はいい曲なんで「ビバッチュ(Bivattchee)はいい曲持ってきたのに絵が良くない」って叩かれてましたね。
 曲はほんと良かったのに、絵が残念なんですよ。他のクールのOPと比べても明らかに見劣りしてましたよ。」
『エウレカセブン』の第3クールのOPの曲は、Bivattcheeの「太陽の真ん中へ」だった。
 余談だが、Bivattcheeは2008年10月に解散を発表、2009年3月1日のShibuya O-WESTでのワンマンライブを持って解散する。

「だからOP作るのって大変なんだって。
 前に富野さんが後輩のアニメーターが初めて監督やるって時に、OPがまだ出来てないってのを聞いて駆けつけて、出来てる本編の数話分から切り貼りしてOPを作ってあげたって話あるけど、あれは富野さんだからだよ。
 富野さんは切り貼りの技術がすごいから出来たんで、普通簡単にはできないよ。」
「それ、OPスタッフのところに富野監督の名前出たんですか?」
「いやあ、出てないと思うよ。だって変じゃないw」
「そうですねw後輩が監督で、OPだけ富野 由悠季って名前出たら、え?なんでって思いますね。」
「あの時はどうしても放送に間に合わないって聞いて、富野さんが手伝ったんだよ。後輩の初監督作品だからって。
 でも使える素材は放送前の3話とか4話分ぐらいで、そこから時間もない中で切り貼りしてOPをでっち上げるって、やっぱり富野さんの切り貼りの技術はすごいよ。
 しかもそれの出来がいいんだよ。その作品のOPの中で一番いいって声もあるぐらいだから。」

「OP用の絵を作らないでですか。
 確かに1stガンダムの映画版は、基本はTVの再編集なのに違和感ないですね。スムーズで一本の流れになってます。」
「うん、富野さんの切り貼りの技術ってのはやっぱりすごいよ。すでにある素材だけで、ここをこうつなげるかあって思うし、なかなか超える人っていないよ。」
「エヴァでも編集の回ありましたけど、うまかったですよ。編集だけど、全然新作として観れたんで。」
「エヴァで編集だけの回ってあった?」
「ありましたよ。台詞とかは新しいんですが、絵は基本編集でしたね。
 ゼーレの老人がこれまでを振り返って、「初の水中戦」とか言ってて、最後は編集じゃなくてロンギヌスの槍を地下で零号機が刺すって回で、あっ「ゼーレ、魂の座」って回ですね。」
「あれも監督は富野さんの切り貼りを意識してると思うよ。」


挿入歌は「盛り上がるところで」とか、「こんな曲ですから曲にあった場面で流してください」って注文はあるね。」
「曲と全然合わないところで流すわけにもいかないでしょうけど、はまったらその曲聴いたらアニメの場面浮かびますね。」

 SEEDの第40話「暁の宇宙へ」の挿入歌「暁の車」は、前半がゆったりしっとりとしたバラード調でカガリ親子の別れの会話シーンで使われ、
 後半のテンポアップした部分は、主人公達がシャトルで宇宙に上がろうとした時に敵が攻めてくるシーンとなり、シャトル脱出後にオーブ(国名)は派手に自爆し(シャトル打ち上げ用のマスドライバーを破壊して敵に使えなくする)、オーブ国家元首のカガリ父は炎の中で本能寺の信長さながらに死ぬ。
 曲と場面が見事に一致した使い方で、絵も崩れずかなり力を入れた回だった。スポンサーもこれだけやってくれれば文句のつけようはないだろうw
 
 偶然なのか次のSEEDディステニーの同じく第40話で、再びオーブは戦場となり、アカツキをカガリが受け取る時にカガリ父が声の遺言で登場している。
 SEEDは戦闘シーン以外はあまり好きではないが、何度か対比的な場面の配置があり、計算されてるなあと思う。

  Mさん話「ガンダムとエヴァDモチベーション」につづく
 (http://cost-off.seesaa.net/article/115749045.html

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関連記事:Mさん話「ガンダムとエヴァ@」
http://cost-off.seesaa.net/article/112749838.html
Mさん話「ガンダムとエヴァAスポンサー」
http://cost-off.seesaa.net/article/113010701.html
Mさん話「DVD化後編」
http://cost-off.seesaa.net/article/120060868.html
『西川君のPVとタイアップ』
http://cost-off.seesaa.net/article/115433720.html
『秘密結社鷹の爪 カウントダウンOP』
http://cost-off.seesaa.net/article/131735263.html
【目次】コラム人物編目次part1
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まとめて読む→アニメ業界話・作品話(Mさん話)カテゴリー
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2009年01月30日

Mさん話「ガンダムとエヴァB続・スポンサー」

Mさん話「ガンダムとエヴァAスポンサー」の続き。
http://cost-off.seesaa.net/article/113010701.html


     Mさん話「ガンダムとエヴァB続・スポンサー」

「昔はさあ、そんなにスポンサーもうるさくなかったんだよ」
「今と違って口出さなかったんですか?」
「昔のおもちゃって似てればいいじゃんぐらいだったんだよ。
 今みたいにアニメを完全再現!なんて凝ってなかったよ。
 それがアニメ観て育った世代がおもちゃ会社に入ってるから、思い入れがすごいんだよ。
 きっちりおもちゃでも再現したいって言うし、それだとおもちゃにしやすいようなデザインに変更ってこともあるからね。変形ギミックとかもおもちゃにする場合を考えないといけなくなった」
「あー、そうなると影響でかいですね」

「そういう意味では、1stガンダムはそんなにスポンサーうるさくなかったみたいでやりやすかったと思うよ」
「え?ガンプラは?」
「ガンプラなんて放送当時はなかったからね。後から人気が出てからだから。
 せいぜいGアーマーとかそれぐらいでしょ。富野さんがスポンサー気にして入れたのは」
「あー、確かにGアーマーは合体したりしてますね。
 TV版では、ガンダムのAパーツ(上半身)とGアーマーのBパーツ(下半身)をつけた状態でザクレロと戦いますけど、映画版だとコアブースターに入れ替えてばっさり切られてなかったことにされてますからねw
 ちなみにトニーたけざきのパロディ漫画では、ザクレロ自体も「ビックリドッキリメカ」とされ、パイロットのデミトリーは「俺はいないことになってる人間なのさ(泣)」って書かれているw
(『トニーたけざきのガンダム漫画2』参照)

「エヴァもそうだよ。スポンサーがうるさくなかったからね」
「エヴァも初号機とかのプラモとかフィギュア出てますよ」
「あれも売れてから後からついたんだよ。売れるってわかってからだね。
 当初からのスポンサーはキングレコードぐらいだよ。
 それもキングレコードの担当は、庵野監督の知り合いで
 『責任は俺が持つからおまえの思い通りに作れ』って言ってくれたから自由にやれたんだよ。」

 エヴァのキングレコードの担当者は大月俊倫氏。大月俊倫氏は、現キングレコード常務取締役兼スターチャイルドレーベル本部長、及びアニメ・特撮企画会社ガンジス社長。

「そうだったんですか、エヴァってスポンサーの介入がなかったから好きに作れたんですね」
「でもエヴァが大当たりしたからキングレコードの一人勝ちだよw」

「スポンサーもあるけど、あとやっぱり放送するTV局側のチェックもあるからね」
「視聴率とかですか?」
「視聴率も当然あるけど、苦情来るのはTV局だからね。
 放送して内容に問題あったら、視聴者はどこに文句言うかって言ったらTV局だからね」
「確かにアニメ会社やスポンサーにはかけませんねwTV局にかけますねw」
「放送したっていう責任が発生するからね。事前に局のチェックが入るんだよ。
 そこでOKもらって放送になるんだけど、NHKが一番厳しいね。
 普通は担当プロデューサー一人の許可がもらえれば放送できるんだけど、NHKは5人の判子もらわないといけないし、納期は放送の三週間前とか特に厳しいって聞くね」

「三週間前って間に合わない場合もあるんじゃないですか?」
「そうだよ。今は放送当日の朝に完成とかあるからね。
 実際、宮崎さんがNHKで『未来少年コナン』を作った時なんか三週間前の納品を守れなくて、ギリギリで納品してチェックでコナンがタバコ吸うシーンが見つかって、作り直す時間ないからそこだけカットされて放送されたことあるよ」
「コナンは最後のほうだけDVD借りて観たんですけど、タバコのシーンなんてありましたっけ?」
「はじめのほうだね。ジムシーと出会って、物々交換でタバコをもらってコナンが初めてタバコを吸って、ばたーんって倒れるシーンだけど、放送だといきなりコナンが倒れてるシーンになってたんだよ。
 NHKにしたら、
 『NHKで子供がタバコを吸うシーンを入れるとは何事だ!』
 ってなって、でもギリギリ納品でもう内容変えれないから結局、物々交換のシーンから全部カットしたんだよ。
 だから観てるほうは、いきなりコナンが倒れてるシーンにつながってるもんだから、なんでコナンが倒れたかわからないまんまだったよ」
「え?そんなにぶつ切りしたら尺足らなくなるじゃないですか?」
「そこは予告を長くして調整してたね」
「あーー、なるほど。そうか、予告で調整できるんだw」

「しかも視聴率悪かったからね。NHKにしたら、
 『納品は遅いわ、タバコ吸うシーン入れるわ、それで視聴率悪いわ、NHKに泥塗りやがって!』
 って怒ったらしくて、普通は製作局が最低2年だったかな?数年は放送権を持つんだけど、コナンは1年ぐらいでフジ(フジテレビ、CX)に売られちゃったんだよ。
 普通、何年かは自分の局で再放送やBSで放送するんだけど、すぐに売られちゃったんだよ。当てつけだろうね。
 そしたら、フジの放送で人気出て視聴率も良くてさ。
 フジはタバコ吸うシーンをカットしなかったから、フジの放送でやっとコナンが倒れた理由がわかったんだよ」
「なるほどw天下のNHKですからね。子供にタバコはダメってのは間違ってはいないですけど、さすがに厳しいですね。
 でも、うちじゃもういらないって売った番組が人気出るって皮肉ですね。
 コナンがNHKだったって初耳だったんですけど、すぐ売ったからだったんですね」

「でも、民放はどこでもそんなに変わらないんじゃないですか?」
「いやいや、1stガンダムだってテレ朝で放送やってたけど、テロップには名古屋テレビって出るでしょ?」
「そうだ、ガンダムはなんで名古屋テレビなのかずっと不思議だったんですよ。キー局のテレ朝じゃないんですか?」
「なんかあったら責任持ちたくないからねw
 だから名古屋テレビにして、何か問題あっても『作ったのはうちじゃなくて名古屋テレビです』って言うためだよ。」
「うっわー、深いですねぇ。そうか、名古屋テレビってそういう意味だったのか。
クレームに『うちは買って放送しただけで、あんな内容とは知りませんでした』って言い訳が浮かびますねw」

「だとしたら、チェックが少なくて制約の少ない局のほうがいいんじゃないですか?」
予算が違うよ。キー局と地方局じゃ予算や制作費が全然違ってくるよ。
 キー局だとタバコ吸うシーンが駄目とか、実際夕方とかゴールデンとか深夜以外の時間帯では制約は多いよ。でも、全国ネット持ってるキー局の製作だと予算が全然違うよ。
 キー局で全国放送だと大手のスポンサーがつくからね。」
「エヴァはテレ東(テレビ東京)でしたね。」
 ちなみに『水曜どうでしょう』は地方局のHTBが深夜枠作ってたから低予算だw

「昔はさ、子供が見る時間帯でも血なんか当たり前だったし、TV自体そんなにうるさくなかったんだよ。今は自主規制もあるし、あれは駄目これも駄目っての多いよ。」
「血はダメって、SEEDとかガンダムOOとか5時〜6時台でも血が出て人死んでましたよ。」
「あれは特別。確かTBSだったよね、SEEDは?」
「そうですね、TBSですね。」(注:SEEDの放送はTBSとMBS、製作は毎日放送)
「SEEDの時は、局のプロデューサーが守ってくれたんだよ。プロデューサーが
 『この内容で戦争を描くのなら、この時間帯でも血のシーンを使ってもいいです。
  血はダメとか言ってたら、戦争や痛みを伝えることはできないですから』

 って、責任は私持ちますって言ってくれたから、あの時間帯であの内容ができたんだよ。
  普通は血のシーンがあるって言ったら、即深夜でやれってなるよ。
 でも、SEED担当のプロデューサーは理解してくれて上層部を説得してくれたそうだよ。
 ほんとそういうプロデューサーって少ないよ」
「そうだったんですか。ガンダムだから時間帯早くても歴史あるからいいんだろうって勝手に思ってましたwプロデューサーだったんですね」

  Mさん話「ガンダムとエヴァC音楽と切り貼り」につづく
 http://cost-off.seesaa.net/article/114118669.html

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2009年01月26日

Mさん話「ガンダムとエヴァAスポンサー」(ver.1.1)

Mさん話「ガンダムとエヴァ@」の続き。
http://cost-off.seesaa.net/article/112749838.html

   
      Mさん話「ガンダムとエヴァAスポンサー」

「ガンダムは打ち切りで、エヴァはラスト2話が間に合わなかった点も似てるけど、やっぱりあれだけの作品ができたのはスポンサーがあまりうるさくなかったのが大きいよ。」
「スポンサーってそんなに口出してくるんですか?」
「そりゃ出してくるよ。出すなんてレベルじゃないよw」
「製作会議にはスポンサーの担当者が5人ぐらい来るんだよ。
 で、他の会社の担当者の話は関係ないからつまらなそうに聞いてるけど、自分の番になったら資料いっぱい出して「うちとしてはですねぇ」って説明始めるんだよ。」
「5人も来るんですか?」
「作品にもよるけど、時間帯が良ければ最低5人は来るねえ。
 ロボット物ならおもちゃ会社が来るし、音楽はオープニングやエンディングの曲のCD関係で来るしね。お菓子のメーカーも来ることもあるし。
 作品の出来が売り上げに直結してるから担当者は必死だよ。」

「でも、おもちゃやプラモは放送された後にそれを見て商品作るんじゃないんですか?」
「とんでもない。おもちゃ作るには型取って、パッケージ作って生産してって何ヶ月もかかるよ。CMも放送しなきゃならないし。
 当然、事前の会議で
 「何月の何週目にこのおもちゃを売り出しますから、それに合わせてカッコよく登場させてください。
 その時はこの武器を使ってください。」

 って、もう放送前から何話に何が出てくるとかまで決まってるんだよ。
 もう契約で「毎週このメカ(アイテム)出してください」とか、「この時期に新しい主人公機を出してください」って決まってるんだよ。」
「えーっ、そうだったんですか。全体の話の流れとかじゃなくてスポンサーの都合だったんですか。Z(ゼータ、ゼータガンダムの略)でMarkUからZへの乗り換えも、おもちゃの会社の都合で決まってたんですか?
 じゃあ、この時期に古い機体はぶっ壊してくださいって言ってくるんですか?」
「うん、「パワーアップさせてください」って言い方してくるね。
 そうしたら新しいの売れるから。」

「パワーアップかぁwもう決まりの言い方まであるんですねw
 なんかショックですね。今まで、もうMarkUのパワーじゃ通じなくなってきて、そこへやっとZが完成したって思ってたのに、全てはスポンサーの都合ですってw」

「番組自体がおもちゃのCMって面もあるからね。そりゃあ注文つけるよ。
 内容にだって口出してくるよ。  
 「こんな脚本じゃおもちゃ売れませんから、もっと派手な内容に変えてください」
 って平気で言ってくるよ。」
「えーっ、内容はプロに任したほうがいい作品できるんじゃないですか?脚本まで口出すって、内容変わっちゃいますよ。」
「だけどおもちゃ会社にしたら、おもちゃが売れるかどうかの宣伝の問題だからね。
 長い目で見れば、いい作品ができたほうがおもちゃもトータルでは売れるんだけどね。1stガンダムのプラモなんて今も売れてるでしょ。」
「ガンプラはMG(マスターグレード)とかHG(ハイグレード)とかずっと出てますね。
 MGシリーズなんか100体目とかだいぶ前にやってましたから。」
「でも担当にしたら、放送してる時期の売り上げが自分の評価になるから「過去のデータによりますと」とかデータ出して色々言うんだよ。」
「なるほど、内容や視聴率じゃなくて売り上げ一本なんですね、評価は。」

「おもちゃ会社に視聴率は関係ないね。おもちゃの売り上げだけだね。
 だから、おもちゃの売り上げを一番稼ぐのはクリスマスだから、その前後が一番の商戦なんだよ。そこを過ぎたらもううるさく言わないね。」
「そういえば、ガンダムOO(ダブルオー)のダブルオーライザーが登場したのもクリスマス前ぐらいでした。」
(2008年12月12日頃にダブルオーライザー関連商品が発売されている。)
「クリスマス過ぎたら担当の仕事も終わりだから、「もう後は自由にいい作品作ってください」って、あとはボーナスみたいなもんで年越したら結構自由にやらせてくれるよw」

「そういえばZZ(ダブルゼータ)も、それまで毎週合体シーンがあったのに終盤になったら初めから合体して戦うんですよ。
 それまで毎週合体シーンがあって、
 「なんだよこれー、いつから六神合体になったんだよー。」
 って思ってて、終盤にシリアスな展開になったら合体なんかなくなって、だったら初めからそうしてろよって思いましたよ。
 ほんと1stにもZにも合体シーンなんてなかったのに、急に3体で合体するって子供向けのシーン入れてきて、
 「なんだこりゃ?合体中に撃たれたらどうするんだよ」
 って呆れてましたけど、あれもスポンサーとの契約だったんですね。」

「そうだよ、契約で入れなきゃならななかったんだと思うよ。
 でも作る側としても本編24〜25分のうち、合体シーンに毎週1分取られたら残りの23分でドラマ作って、ちゃんと合体シーンが出るように戦闘場面に話持っていかなきゃならないから大変だよ。

「てっきりバンクの合体シーンで時間稼ぎしてるのかと思ってましたけど、逆ですね。」
「逆だよー。その1分作るのに他のシーン削らなきゃならないし、その1分があれば他のエピソードが1つ入れれたとか、編集で泣く泣くカットしてるんだよ。
 だからカットしたシーンを予告編に使ったりしてるんだよ。」
「あー、たまにありますね。予告にあったシーンが本編のどこ探してもなかったとか。あれはカットしたシーンだったんですね。
 ほんと作る側も制約だらけになりますね。
 その上に「もっと派手なのにしてください」って言われたらかなり厳しいですね。」
「だから、そこを見る側にもわかってほしいよ。好きでこんなシーン入れてるんじゃないってのを。
 でも、スポンサーがお金出してくれないと作品自体作れないからね。
 ○○君(俺の名前)もお金出してたら口出すでしょ?」
「あ、もう絶対出しますねwあの作品のあのシーンみたいなのをやれってw
 自腹で金出したんなら、ヤンキースのスタインブレナーオーナー並に注文つけますね(笑)。」


    「ガンダムとエヴァB続・スポンサー」につづく
  (http://cost-off.seesaa.net/article/113203782.html

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2009年01月19日

Mさん話「ガンダムとエヴァ@」

    Mさん話「ガンダムとエヴァ@」
 
 2009年1月3日、駅前のファミレスにて。
 正月にMさんはケーブルテレビの再放送ファースト(以下、1st)ガンダムのTVシリーズを、俺はTVKの正月特番で放送していた1stガンダムの映画版のメモリアルBOXをちょうど観てたので、1stガンダムの話をした。

 よく言われることだが、1stガンダムが世代を超えて評価される理由として、
・世界観や人間ドラマがしっかりしていて、モビルスーツはあくまで特殊兵器的なポジション
(宇宙移民はヨーロッパから新大陸への移民の歴史をなぞっているし、軍事的な部分は第二次世界大戦を元にしている。)
・複雑な政治的な駆け引きの部分は大人になって初めてわかる
・台詞や言い回しに無駄がなく深い
などがある。
 それを踏まえてMさんとトーク。

「今観ても全然面白かったですよ。」
「面白いよね。でもね、ガンダムが初めて放送された時はほとんど受け入れられなかったんだよ。」
「確か視聴率悪くて打ち切りになったんですよね?」
「うん、1年50〜52話の予定が43話で打ち切られている。」
「再放送で人気上がって映画化されたとか聞きますけど、初め何で人気出なかったんですか?」
「それは当時のアニメ状況を考えたらなかなか受け入れられないよ。
 当時のロボット物っていったら、まず博士が出てきてロボットを開発してだよ、そこへ世界征服を企む悪の組織が来てってのがパターンだったんだから。
「博士ってwそれじゃスーパーロボじゃないですかww
 世界征服って仮面ライダーじゃないんだからw」

「いや、笑うけど当時はそれが普通だったんだよ。
 周りのアニメはそういう状況でさ、しかも 子供向けのロボットアニメで軍隊とか国と国との戦争とか言い出してもまず理解されないよ。その前だと富野さんのザンボット3とかがあるぐらいで。」
「あー、そういう時代だったんですか。ザンボット3は知らないですねー。」

「それにキャラクターだって、昔のロボット物だと主人公は「俺がやっつけてやる!」ってさっそうと出撃してたのに、アムロはうじうじしてるし、ブライトも嫌な奴じゃない。シャアは何考えてるかわからないし。」
「子供が観るとそうですね。僕も小さい頃に初めて再放送で観た時は、シャアはジオンのくせになんでガルマを裏切るんだ?とか、ザビ家との複雑な関係とか全然わからなかったですよ。
 ニュータイプがどうのこうも子供にはわかりづらかったですね。説明で出てくるのは概念の話だし、いきなり宇宙で話し出したりするわけですから。
 一番はギレンの演説はいらねーってのがありましたね。子供には内容が難しくてわからないから、いいからさっさと戦えよって思ってましたね。」
 このギレンの演説がヒトラーの演説になぞらえてるのだと大人になってわかった。劇中でもギレンを「ヒットラーの尻尾」だという台詞があって示されている。

「今は受け入れられてるけど、初めて放送で観た時はそれまでのアニメと話もキャラも全然違うから拒否反応みたいなのが起こったんじゃないかな。それで初回放送は視聴率取れなかったんだと思うよ。
 それまではほんとにロボット物って言ったら、主人公が勢いよくコクピットの乗り物でロボットに合体して、バッタバッタと敵を倒すもんだったんだよ。修理と補給なんかなかったからね。」
「マジンガーZのパイルダーオンじゃないですかw
 確かにガンダムは、無敵のロボットというより第一次世界大戦で初めて出たタンク(戦車)に近い感じがしますね。あくまで特殊兵器の域を出てないですね。」

「そんなロボット物ばかりの中で富野さんはガンダムを作ろうとしたわけだよ。
 だから、当時の脚本家に聞いたことがあるんだよ。当時からあの1stの世界観や台詞の意味とか理解してたんですか?って。そしたら、
 「いや、わかってなかった。全部わかって書いてたわけじゃない。」
 って言ってたから、スタッフも全部理解してたわけじゃないんだよ。監督の頭の中にだけ全部あって、監督が後から脚本に手を入れたりしてたんだと思うよ。

「ガンダムの世界観はほとんど富野監督一人で考えた世界なんですか?」
「あらかたそうだと思うよ。脚本家がわかってないんだから。
 そういう意味で富野さんはやはり天才と言われるわけだよ。それ以後のアニメにどれだけ影響与えたかわからないからね。
 今のアニメーターとか監督で影響受けてない人いないよ。
 エヴァンゲリオンだって、あれは庵野監督(以下、庵野)のガンダムだからね。庵野版ガンダムだよ。」

「えーーっ全然似てないですよwエヴァとガンダムは。」
「いや、パロディって意味じゃなくて、エヴァは庵野がガンダムに挑戦したっていうか、自分なりのガンダムを作ったっていう感じなんだよ。
 名前からして「綾波レイ」はもろ「アムロ・レイ」を意識してるでしょ?
 アムロがガンダムに乗る乗らないってのは、エヴァで主人公がエヴァに乗る乗らないってのも同じだし、脱走するとこも同じだよ。

「あー、確かにシンジもアムロみたいに脱走するし、言い方は違いますけどエヴァに乗る乗らないの問答ありますね。う〜ん、あれはアムロをやってたのか・・。表現が違うんで気づかなかったです。
 綾波レイ=アムロ・レイってのも、完全に気づきませんでした。エヴァも12年ぐらい経つのに初めて気づきましたよ。イニシャルだとまったく同じですね、A・レイで。」
12年以上経って初めて気づいた真実だったw

「もう観たら一瞬でわかったよwあ、これは庵野版ガンダムなんだって。ガンダムへの挑戦なんだなって。
 で、聞くところによるとエヴァが数話できたところで庵野は富野さんのところに持っていったそうなんだよ。たぶん「こういうの作ってみました!(僕なりのガンダムです)」って感じで。」
「そしたら富野監督は?」
「それがあまり相手にしてもらえなかったって聞いたよ。」
「えー、そんな反応だったんですかwエヴァなのにw」

    Mさん話「ガンダムとエヴァAスポンサー」につづく
   (http://cost-off.seesaa.net/article/113010701.html

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関連記事:Mさん話「DAICON4(庵野監督)」
http://cost-off.seesaa.net/article/120560117.html
アメリカンな実写版ガンダム「GUNDAM 0079 The War For Earth」
http://cost-off.seesaa.net/article/148768078.html

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2008年12月08日

京都アトム『アトム誕生の秘密』『イワンの惑星』

 京都駅の一角、京都劇場の隣にはKYOTO手塚治虫ワールドがある。
手塚治虫ワールド2.jpg
 そこで、TV放送もソフト化(DVD化など)はしない京都駅限定の手塚作品のアニメが有料で観れる。
 有料と言っても1本200円で24分ぐらい。TVの1話分が日替わりで観れる。新幹線の時間調整のつもりで一回観にいったが、クォリティーは全然高くTVで放送しても十分な出来だった。
 日替わりなので一度に1本しか観れないようになってる。京都駅で時間がある時にはぜひオススメ。
今まで観たアトム2本を紹介。京都駅でしか観れないアトムなので、通称「京都アトム」と言われる。
(現在は同施設とネット配信で購入も可能になっている。    http://douga.nifty.com/cs/title/subcategorydesc20/00610/1.htm

京都アトム上映中2.jpg
KYOTO手塚治虫ワールドオリジナル作品一覧
京都アトム上映中.jpg
上映中作品
アトム誕生の秘密.jpg
アストロボーイ・鉄腕アトム『アトム誕生の秘密』
 今日(08/12/8)上映してたので帰りの新幹線の前に観た。
アトム誕生のTV放送第一話の前0話というより、裏1話という感じ。
 ストーリーは画像にもありますが(クリックして拡大すると読めます)、天馬博士がアトムを作る=死んだ息子・飛雄を甦らそうとする有名な話なんですが、禁止されてる人口知能と火星で研究中のアトムのボディ(まだコードネームで呼ばれてる段階)、原作では単純に交通事故とされてる飛雄の事故の背景、天馬博士の科学省長官時代(まともな頃)などが出てきます。
 人口知能を魂のように解釈していて面白い。正直、こっちのほうをTVの第1話にしたほうがよかったと思うw
 ただ一点、飛雄の台詞で「パパを愛してる」というのがあるけど、子供が「愛してる」って言葉を使うのはちょっとだけ違和感があった。

 『アトム誕生の秘密』のスタッフは、監督:出ア統 脚本:森田真由美 演出:桑原智 作画監督:西田正義 美術監督:斉藤雅巳。

イワンの惑星.jpg
アストロボーイ・鉄腕アトム『イワンの惑星』
 イワンは上の画像のロボット。
こっちは、24分の中に色んな人物が出て、それが行動とかデータが逆に出て、いい人っぽいのにデータ上は指名手配犯とかでて、「え?どっちが悪いやつなんだ?」って感じで話が進んで、最後まで見ないとどっちがいいやつなのかわからない。
 展開が実にスピーディーで、ほんとあと1分尺があってその後の説明が欲しいぐらい。
 で、このイワンってロボットが最後のほうに泣くシーンがあるんだけど、
「ロボットに泣く機能なんてあるのか?あの涙はオイルなのか?そんな出来のいいロボットか?」
と、俺は思って観てたが、上映後すぐ後ろの子供が泣いており、母親が
「もう、そんなに必死にならないの!ほら立って、行くわよ。」
と言うと、
「だってかわいそうだもん・・」
と泣きながら返してた。
 俺は、いつの間にかひねくれた大人な見方をしていた気づいた。そうだよなあ、悲しい終わり方だもんなあ。アトムの泣くシーンは出ないけど、泣いてるのがわかるしなあ。
なのに、俺は「ロボットに泣く機能?」とか疑ってた。あー俺もう大人なんだなあw
 『イワンの惑星』のスタッフは、監督:出ア統 脚本:森田真由美 演出:桑原智 作画監督:西田正義 美術監督:斉藤雅巳。

 このKYOTO手塚治虫ワールドオリジナル作品には、オープニングとエンディングがないので、アニメーターや演出担当などはわからなかったので受付の人に聞くと、やはり詳細はわからないが、アトム(アストロボーイ・鉄腕アトム)の3作品は手塚プロで同時に製作されたということだった。
(注:上のネット配信のページでスタッフの詳細がわかりました。)

〜〜
関連記事:Mさん話「アニメーターと演出」
http://cost-off.seesaa.net/article/104815245.html
Mさん話「映画とディレクターズカット」
http://cost-off.seesaa.net/article/98197272.html
Mさん話「原作付きアニメ化」
http://cost-off.seesaa.net/article/100823059.html
【訃報】出ア統監督死去【アニメ監督】
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・Mさん話「出ア統監督」【追悼】
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2008年11月22日

Mさん話「絵コンテ」

Mさん話「アニメーターと演出」(http://cost-off.seesaa.net/article/104815245.html)に関連した話。


     Mさん話「絵コンテ」
 
 図書館で映画ドラえもんの絵コンテ集が出版されてるのを見つけた。
dora.JPG
映画ドラえもん『のび太とふしぎ風使い』絵コンテ集

 以前、Mさんから「絵コンテで一番うまいのはこの人だよ」とコンテを見せてもらったことがあるが、本当にうまくて原作者の藤子F(藤子・F・不二雄)よりうまいと思った。
 コンテが漫画のように読めてしかも、動きがアニメの1コマ1コマぐらい細かく緻密に描かれているのだ。思わず、Mさんに「ここまで細かく必要があるんですか?」と質問したほどで、書籍化されるのも納得。

 コンテを見せてもらった時の会話。(一部過去の記事と会話が重複)
「Mさんは、元々絵が描けるからこの業界に入ったんですか?」
「いや、初めは描けなかった。描けなかったけど、人の絵に文句つける仕事を20年近くやってると描けるようになるんだよ。例えば・・」
テーブルにあったナプキンにさっと簡単に人物が向かい合ってる絵を描くMさん。
「これ、どう見える?」
「人が向かい合ってるように見えますが?」
「ぱっと見たらそう見えるけど、よく見ると人物同士の視線が合ってないんだよ、これ。
 平面的に見ると問題ないように見えるけど、立体的に見ると視線が合ってない。面と向かい合って会話してるのに、視線が合ってないのは
変でしょ?特別仲悪いとか設定でもなければ。」

「う〜ん、確かにそういわれて見れば合ってないように見えますね。」
「今はこんな紙にさっと描いたけど、これがアニメになって動かすようになるともっと変だってのはわかるから、修正するように指示を出すんだよ。」
「なるほど、そうですね。動きをつけるとズレがはっきりしますね。」
「こういう風に人の絵に文句つけるのも仕事のうちなんだ。
 でも、初めから絵が描けるからってこっちの世界に入ったわけじゃないから、今よりもコンテの絵が下手なわけ。だから、アニメーターも言うわけよ、「こんなコンテじゃわかりませんよ!」って、そう言われるとじゃあわかるように描いてやろうじゃないのって、必死になってコンテを描いてるうちに段々描けるようになったんだ。」

「そうだったんですか。てっきり皆絵が描けるからアニメの業界に入ったんだと思ってましたよ。絵はもう半分生まれつきで、みんな絵がうまいからアニメーターになろうって思ったんだろうって思ってましたから。」
「このドラえもんのコンテの芝山さんは特別。同じ映画でも他の人と柴山さんが書いた部分じゃ全然違うのわかるぐらいだから。」
「あっ、途中から絵が明らかに変わってますね。これは他の人ってことですね。確かにグレードが違いますねw」
「宮崎さんもうまいよ。ナウシカの絵コンテも出版化されてるけど、ほんときれいに描いてて、そのまま描けばいいぐらいだから。」
「それ見たことありますよ。文庫本にもなってましたよ。
 きれいだし、売れてたんでしょうね。」
「あれを見ると勉強になるからね。」

「でもね、絵コンテがきれいだから必ずしも作品が面白くなるとは限らない。
 きれいな絵コンテは、うまいアニメーターが描けばきれいなのができるよ。
でも、作品としての面白さはそれだけでは決まらない。
 師匠の絵コンテなんか、毎週レギュラー放送をほとんど一人でやってたからちゃんと描いてる時間なんかないから、ほんとに必要な情報だけでそれ以外は真っ白ってのも多かった。
 でも、その中に必要な情報はちゃんとあるし、演出の意図がわかるようになってて足らない部分は打ち合わせで口で説明して作ってたけど、それでも名作を次々作ってたからね。」
「え?そんなに時間なかったんですか?」
「だって今だと月4週あったら3,4人で担当するのを師匠は一人でやってたから、単純に4倍の仕事量だったからちゃんとコンテを描く時間なんか取れないよw
 Aパートの作業進めながら、Aパートが完成しないうちにBパートの頭のほうの指示出したり、今週分が上がってないけど来週担当の班が指示待ってるから指示出したりとか今じゃ考えられない量の仕事をこなしてたね。」
「ええーっ、Aパートが終わらないうちにBパートとか来週分を始めるってつながりおかしくならないですか?」
「なんていうか、Aの終わりが決まってからとかBの頭が決まるとかそういう切り方じゃないんだ。平行して作るから今週の上がり待ってからじゃ間に合わないしね。」

「そうか、一本ずつ作るわけじゃないんですね。
 それにしても真っ白なコンテでよくわかりますね?」
「そこはスタッフの頑張りだよ。想像力働かせていい作品作ろうって頑張ってたんだよ。
 師匠のコンテとか見せても読めないと思うよwほんとに記号というか、メモというかそんなんだもんw」
「それは読んでもわからないですねw
 このドラえもんのコンテは、漫画以上にきれい書き込んであってスラスラ読めるから続き気になりましたけど。」
「確かにきれいなコンテのほうがアニメーターもわかりやすいし、演出が伝わりやすいよ。
 もし、ここまでコンテにきれいに描いてあるのにできた画が変だってなると、コンテがわかりづらいからなんて言い訳は絶対できないからねw
 でも、必ずしもコンテがきれいだから作品もいいって言うのは一致しない。時間がなくてコンテが真っ白に近くても、必要な情報がそこに合って内容が良ければ面白い作品はできるんだよ。」

「あー、そういうことだったんですか。
 でも、一般人がもらうとしたら絶対きれいで読めるほうを選びますよw何描いてるわかんないのだと価値わからないですよ。」
「うん、そうだよねぇw一般人に師匠のコンテ見せても価値はわからないと思うよw
 あとね、東映の初期は元々京都の太秦で時代劇撮ってた人達が、映画の時代劇部門の縮小でアニメに異動してきてた人達は、もともと漫画見てアニメ作ろうってルートじゃないから、撮影や演出はできるけど絵は描けないからコンテは描かないって場合もあるよ。」
「そういうルートで業界に入った人もいるんですか。」

2008年4月、駅前の居酒屋にて。

〜〜〜
関連記事:Mさん話「演出と脚本」
http://cost-off.seesaa.net/article/97360336.html
Mさん話「最近の打ち合わせ事情」
http://cost-off.seesaa.net/article/124937613.html
Mさん話「才能U」
http://cost-off.seesaa.net/article/100309680.html

Mさん話「ガンダムとエヴァ@」
http://cost-off.seesaa.net/article/112749838.html
Mさん話「視聴率・壱」
http://cost-off.seesaa.net/article/116620802.html
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2008年10月30日

Mさん話「高畑監督」

      Mさん話「高畑監督」

俺 「高畑監督と宮崎監督はどっちは先輩なんですか?」
M  「高畑さんが全然先輩だよw宮崎さんの師匠に当たる人が高畑さんだよ。」
俺 「あ、そうなんですか。『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』しか知らないんで。どういう関係なのかまでは知らないです。」
M  「『平成狸合戦ぽんぽこ』もそうだし、ハイジ(『アルプスの少女ハイジ』)の演出もそうだし、気づいてないだけで高畑さんの作品はかなり見てると思うよw
   高畑さんは、僕がまだ素人の頃に一度会って1時間ぐらい話したことがあるんだけど、すごい理論的な人だったよ。」
俺 「えっ、素人の頃に会ったってトークイベントか何かですか?」
M  「素人仲間でアニメの上映会を企画してて、フィルムを借りに行った時に使用許可の挨拶に行ってたら会ってくれたんだよ。
   当時は、ビデオはないし見たいアニメがあってもいつ来るかわからない再放送を待つか、カセットテープに音だけ録音したのを聞くぐらいしかなかったからさ、上映会を企画してフィルムを借りて好きな作品を見ようイベントがあったんだよ。」
俺 「フィルムって貸してもらえるんですか?」
M  「ちゃんと企画書にどこでどういう目的で使うかを書いて、料金を払えば貸してくれるよ。
   でも、儲かりはしないんだけど上映会って形にしたら何人かで見たら少しは安くあがるし、何より自分達の好きな作品が見れるからね。当時はそうでもしないともう一生見れないと思ってたからねw」
俺 「ああ、そういえば田舎でも映画好きの人が小さなホールで上映会やってるポスター見たことあります。
   映画館じゃやらないヨーロッパのマイナーな映画を、しかも小さなホールでなんでやるんだろう?って思ってましたが、あれは金儲けじゃなくて自分達が好きな映画を見たいからだったんですね。」
M  「うん、それと大体同じだね。でも、そういうってあんまり派手で面白そうな映画やらないよね?」
俺 「そうですそうですw映画館でやらない作品ばっかりでしたよ。
   ハリウッドじゃなくて、ヨーロッパの芸術に走ってる作品とか、白黒の戦争物とか人生の悩みだとか暗い作品とかばっかりで、月1ぐらい上映会やってるってありましたけど一回も行かなかったですねw
   だって、高校生ぐらいで小遣いの中から金払って映画見るんだから、派手でスカッとするの見たいですからねw」
M  「だよねえw」

俺 「それで高畑監督とは会ったんですか?」
M  「うん、フィルムは会社の所有物だから許可は取れたけど、やっぱり作った監督にも上映会で使わせてくださいって挨拶しておかないと思って、菓子折り持って挨拶行ったら、ちょうど会社にいたんで会ってくれたんだよ。緊張したよ。」
俺 「やっぱり緊張しましたかw」
M  「そりゃ、自分の好きな作品を作った人が目の前にいるわけだからね。直立不動だよ。
   で、頭下げて菓子折り渡そうとしたら、
  「まず君は誰だ?どういう理由でそのお菓子を渡そうとしているんだ?」って言われて、つまり
   「自分が納得しないうちは、訳もなくお菓子を受け取るわけにはいかない。」ってことなんだよ。」
俺 「それ、政治家が言ったらすごいですねw」
M  「それで、自分は今度上映会を企画して、そこで監督の作品を上映したいので許可を頂きに来ましたって説明して、できましたら上映会に対して何かコメントか一筆下さいって言って、他の監督さんからはこういうコメントや色紙を頂いてますって見せたら、ちゃんと他の人のコメントや色紙を見てくれて、他の監督が書いてくれた達筆過ぎて読めない色紙の内容を「これはこういう意味だよ」って教えてくれたりしたんだよ。」
俺 「初対面なのによく話してくれましたね。」
M  「ほんとそうだよねぇ。いきなり行ってだからね。挨拶ぐらいで話できるなんて思ってなかったからね。
   それでせっかくだから、こっちも高畑さんの作品でずっと疑問に思ってたことを聞いてみたんだよ。何回観ても、あの作品の何話のあの人物の行動の意図がわかりません、どういう意図があったんですか?って。」
俺 「え〜それでなんて?」
M  「そしたら、
   「どういう意図があって行動をさせたのかを、今ここで説明することは簡単だよ。だけど、それは言い訳になる。
   フィルムが作品の全てであって、フィルムを見て伝わってないというのであれば、私の力不足だ。私は言い訳はしたくない。」
って返答だったけど、すごいと思ったね。」
俺 「潔いですね。」
M  「普通はさ、わからないって言われたら伏線があるとか、前にこういう描写があるとか説明したいもんだよ。
   でも、フィルムが全てだっていうポリシーを持ってて、それを初めて会った素人に向かって自分の力不足だって言うのはすごいよ。言えないよね。」
俺 「いやー、言えないですよ。逆にちゃんと見ればわかるよって言われそうですもん。それに素人が会いに行って会えるもんじゃないですからね。」

〜〜〜
関連記事:Mさん話「映画とディレクターズカット」
http://cost-off.seesaa.net/article/98197272.html
Mさん話「江頭2:50とお笑い」
http://cost-off.seesaa.net/article/97482630.html
【目次】コラム人物編目次part1
http://cost-off.seesaa.net/article/107966008.html

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2008年10月03日

Mさん話「作監」「茄子 アンダルシアの夏」

Mさん話「緑ルパン」の続き。
http://cost-off.seesaa.net/article/106965438.html


     「作監」

俺 「緑ルパンは、古い作品なのに絵がけっこう安定してますね。」
M  「そもそも作監(作画監督)ってのは日本で始まった役職(仕事)だからね。」
俺 「え?海外はないんですか?ディズニーとかは?」
M  「ないない。アメリカで他人の絵を描き直すなんてやったら大変だよ。仕事の侵害とかで問題になるよ。」
俺 「じゃあ、なんで(作監は)できたんですか?」
M  「あまりにも絵の技術にバラツキがあって変だから、それを統一するためだよ。
   確か東映動画が始めたんじゃなかったかな。
   アメリカでは、仕事の内容や権利とかが契約で決まってるから、変だからとか気に入らないからって勝手に直せないんだよ。」
俺 「へー、そうなんですか。」

Wikiによると、
「作画監督は、一般的にアメリカではキャラクター別にアニメーターを割り当てるのに対して、日本ではカットごとにアニメーターを割り当てる。そのため、カットごとのデザインの統一性が失われるのを防ぐために設けられた役職。
 作画監督の主な仕事はレイアウト、原画を修正する事で作品を通じて絵柄、品質を統一することである。相応の経験を持つアニメーターがこの役割を担当する。」
(参照:Wiki「作画監督」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%9C%E7%94%BB%E7%9B%A3%E7%9D%A3

    
    「茄子 アンダルシアの夏」

俺 「最近、発掘したのは『茄子 アンダルシアの夏』(2003年7月劇場公開)の新作の『スーツケースの渡り鳥』(2007年10月OVA)ですね。」
M  「あれは監督が自転車好きなんだよ。そうでないと、なかなか自転車を素材にアニメに作ろうとは思わないよw」
俺 「あ、そうなんだwやけに海外のレースの詳しい描写が出るんで、よく調べたなあと思ったんですが監督の趣味ですかw僕も自転車やってる友達からDVD勧められて観たんですよ。」
M  「面白かった?」
俺 「良かったですよ。でも、僕はスーツケースよりアンダルシアのほうが好きですね。
   『アンダルシアの夏』は、シンプルな話で勝つんだろうなってのはわかるんだけど、最後は追い込まれてきてグイグイ引き付けられるし、背景のスペインの田舎はまだこんな感じなのかってとかもあって。
   「倍頑張らないと生まれたところから出られないだろ!」って台詞もいいし、45分ぐらいの作品としてはかなりいいと思いますよ。」
M  「そうかぁ。」
俺 「あと、主人公の声優が大泉洋なんですよ。まだ全国的にブレイクする前の。
   僕も初めてアンダルシアを見た時(数年前)は、大泉洋って誰か知らないし、パッケージに大泉洋(水曜どうでしょう)ってあっても、「水曜どうでしょう」のほうもわからなかったんで新人の声優かなと思ってたんですよ。
   それでも観てて全然違和感なかったですよ。」
M  「うん、大泉洋はうまいよねえ。」

 『茄子 アンダルシアの夏』の主人公ペペ・ベネンヘリの声優は、大泉洋が担当。
 Wikiによると、『茄子』の監督・脚本・キャラクターデザイン・作画監督を勤めた高坂 希太郎は、第3回富士ヒルムクライムアスリートクラスで3位入賞するなど、アニメ業界最速を誇る自転車乗りとして知られている。
 また、自他共に認める「水曜どうでしょう」の大ファンであり、茄子シリーズ1には出演者の大泉洋を主演の声優に抜擢。シリーズ2作目では水曜どうでしょうのディレクター2名も声優として起用した。
公式HP:http://nasu-summer.com/
nasu.jpg
茄子 アンダルシアの夏
nasu3.jpg
茄子 スーツケースの渡り鳥

参照:Wiki「茄子 アンダルシアの夏」
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8C%84%E5%AD%90_%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AE%E5%A4%8F



〜〜〜〜
関連記事:Mさん話「アニメーターと演出」
http://cost-off.seesaa.net/article/104815245.html
・Mさん話「映画とディレクターズカット」
http://cost-off.seesaa.net/article/98197272.html
・Mさん話「江頭2:50とお笑い」
http://cost-off.seesaa.net/article/97482630.html
・Mさん話「原作付きアニメ化」
http://cost-off.seesaa.net/article/100823059.html
・Mさん話「ガンダムとエヴァ@」
http://cost-off.seesaa.net/article/112749838.html

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2008年09月22日

Mさん話「緑ルパン」ver.1.1

Mさん話「宝島」の続き。
http://cost-off.seesaa.net/article/106218441.html


    Mさん話「緑ルパン」

 Mさんから『宝島』と一緒に借りたのが、『ルパン3世(TV第1シリーズ)』のDVD-BOX。ルパンのジャケットが緑(青緑)色なので通称「緑ルパン」と呼ばれる。放送は1971年10月-1972年3月。ちなみにセカンドシリーズは赤ジャケット、サードシリーズはピンクのジャケット。

 Mさんよると、開始当初は視聴率が振るわずに監督は7話ぐらいで交代、その後は高畑監督と宮崎駿監督などが名前を伏せて担当していたそうだ。でも、通にとっては前半の監督降板前のハードボイル路線のほうが評価が高いとのことだった。
 内容的には、初めは敵だった五ェ門が仲間になる経緯や不二子の過去の話、後半にはカリオストロのような城や贋札話、『紅の豚』を思わせる飛行艇での空中戦があったりと、動き的には時代を感じるものの、カリオストロしか知らなかったのでルパンってこんなだったのかという感じで面白い。

俺 「全然カリオストロとは違いますね。
   でも、逮捕されてわざとギリギリで脱獄する話で、銭形が
  『なんで脱獄しないんだ、脱獄しないルパンなんてルパンじゃない』とか言うのはやっぱり変わらないですねw」
M  「ルパンがバンバン銃撃って人も殺したり、不二子も元は殺し屋組織にいたとかさ、仲良くみんなそろって宝探しみたいなノリじゃないからね。
   五ェ門はたまにしか出ないし、次元はルパンとつるんでるけどそれも一緒のほうが面白いからいるってだけでさ、つまなくなったら離れちゃうしで、ぞろぞろいつもみんないるって他のシリーズとは違うんだよ。TVシリーズで一番はこれだね」

俺 「なんていうか、全体的にルパンの若い頃みたいな感じです」

M  「カリオストロのルパンは、自分のことを『おじさん』って言っていい人になってるけど、あれには宮崎さんの『もうルパンに人殺しはさせたくない』って考えがあったそうだよ。だから伯爵も最後は時計台で自滅でしょ。
   途中でルパンの回想シーンで宝石を掃除機みたいな機械で吸うのが出てくるけど、あれもちゃんと緑のジャケットでその話があったでしょ?」

俺 「ありましたありました!ちゃんと元の話があって、時間的経過があったんだあって思いましたよ」


 Mさん曰く、第1話のF1レースのシーンは今は技術的にできないぐらいそうで、
俺 「え?そんなにすごかったですか?F1の映像をそのまんまトレースしたんだなって思って見てましたけど。」
M  「いやあ、あのレースのシーンは今作ろうとしてもできないよ。すごい技術だよ。
   実在のフェラーリ(312B)とか車種まで特定して描いてるんだもん」

 ここでMさんは緑ルパンの設定資料を見せてくれる。車種などの細かい設定が載っている。

M  「スポークの数にしたってこんなに網の目状になってるし、実際にあれを動かすには乗ってエンジンかけたら、どこがどう振動するか構造がわかってなきゃ描けないよ」

俺 「だって車は実物の見本があるけど、ガンダムとかは実在しないほうが想像しなきゃならない分車より難しいんじゃないですか?」

M  「ロボットとかはさ、実在しないから嘘がかけるでしょ。たとえ、間違ってても実在しないんだからわからないじゃないw」

俺 「あー、そうか。間違ってるっていっても実物ないんですよねw
   そういえば、時々あきらかに手足が伸びてる画がありますね」

M  「こんなフェラーリとか実際の車を指定してアニメで動かしたのはこれが最初だからね。もう観ててぞくぞくしたよ。知ってるスポーツカーがアニメで動いてるんだもん。
   今はこんなの手間がかかるし、技術的にもかける人いないからまずできないよ。あの車で使いたいっていってもできないから、ホイールもスポークがないのっぺりした車とわかるマンガの車を使うわけ。
   それは観た人には車と認識されるけど、実際には存在しない車でいわば車の記号を使ってるんだよ

俺 「確かに車とわかりますけど、実際にどの車種かって言われたらない車がアニメには出ますね」

M  「途中からルパンの車がフィアットに変わるじゃない?あれは毎回このクオリティじゃ作業が大変でとてももたないから、後半はまだ描きやすいフィアットに変えたそうだよ。
   それも担当した監督(演出)がフィアットに乗ってたからだったんじゃないかな」
俺 「それでも、ちゃんと車種は指定してるんですね。
   そんなに車って難しいもんですか?今は当時よりCGもデジタルもあるし、技術的には上がってるから描けるんじゃないですか?」
M  「実在する車種を特定してるから、嘘がかけないし、嘘描いたら振動やカーブの曲がり方にしても乗ってる人がいるからすぐバレるよ。
   オープニングでタイトルの後ろから車が飛び出してる来るのだって、今は描ける人そういないよ」

俺 「えー、あれだってガッシャーンって出てくる一瞬のシーンですよ。それが描けないんですか?昔よりアニメーション学院とか養成所いっぱいあるし、資料は本とか実物見ればどう曲がるとかわかるじゃないですか?」

M  「止まってる絵は描けるんだよ。動かすのが難しいんだよ。
   こんな網の目のスポーク一本一本をコーナーで曲がった時にどう見えるかとか、座席に座った時にどこに頭とハンドルが来るのかとか、一台一台違うからそりゃあ難しいよ。
   養成所があってもアニメの数からいったら、アニメーターは全然足らないし、本当に腕があって描ける人は忙しいし頭数が足らないよ。
   この車で動かしてっていっても、描ける人は内容見ただけで大変だってわかるからなかなか受けてくれないよ。だから実在の車を動かすなんて大変なんだよ。どんだけ時間取られるかわからない」

俺 「そうなんですか。でも特にすごいシーンとは思わずに、普通にレースのシーンだなって違和感なく観てたんですけど」
M  「普通に違和感見れたってことは、ちゃんと嘘がなくてよくできてるってことなんだよ」


俺 「カリオストロも初めはカーチェイスで入りますよね?」
M  「カリオストロが発表されて業界内で真っ先に評価されたのは、あのカーチェイスのシーンなんだ。
   描いたのは緑ルパンの第1話でレースシーン描いた人だから、みんな
   『ああ、やっぱりあの人かあ。車描かせたらあの人が一番だな』
   って皆納得してたそうだよ。」

俺 「そうなんですか。緑ルパンからカリオストロまでだいぶ時間空いてるのに、やっぱりその人が一番って評価なんですね」

M  「で、困るのがわかってないのに新人が描けますって引き受ける時なんだよ。
   ベテランが断ってるのに、おまえほんとにわかってるのか?って思ったけど、描けるって言うから任したら後でやっぱり描けませんってことがあるんだよ」

俺 「それどうするんですか?シーン変えるんですか?」
M  「そういう時は、手の空いてる人に無理言って頼むとか監督が描ける人なら自分で描いちゃうんだよ。だから人見て頼まないと監督や他の人のドンドン仕事が増えちゃうんだ」

俺 「後で無理ですって言われたら、任してた分描く時間減ってよけい困るじゃないですか」
M  「うん、遅くなるしスケジュールは変えられないからきつくなる」

俺 「それはまずいでしょうw大体、描けるかどうかってわからないもんなんですか?
   元々絵がうまくてアニメーターになってる人ばかりだから描けると思うんですけど。絵が下手な人は元々なろうとは思わないですからね」

M  「新人だったからね。ベテランだったら、コンテ見てこれ動かすなんて無理ってわかるから避けるんだよ。
   養成所があってもアニメの本数から行ったらやっぱりアニメーターは足らないし、人物は描けるけど車やメカは苦手とか得意分野もあるからね。そうなると車がちゃんと描ける人ってのは、やっぱり数は限られるんだよ。
   一回呆れたのが、空手の押忍ってポーズで手を腰に引き付ける絵を頼んだんだよ。そうすると、こう、手の平が上に来る絵なんだけど、親指はどっち側に来る?」

俺 「こうですよね。親指は外側というか体の反対側ですよ」
M  「だよねぇ。でも上がってきた絵は親指がお腹の側にあるんだよw」
俺 「ええっwだってそれは自分の体でポーズをとればわかることじゃないですか(笑)
   何もナマケモノとか珍しい動物のポーズじゃないしw人間の手でしょう?描く前に自分でやれば間違えようがないですよ」

M  「たぶんその人は僕らと体の構造が違うんだろうねえw
   でも、実際にそういう絵が上がってくることがあるから困るんだよ」
俺 「なんで出す前にチェックしないんだととか、どっこからツッコめばいいのか迷いますねw
   手とか人体だと注意して見たら誰でも気づきますからね」

Mさん話「作監」「茄子 アンダルシアの夏」につづく
http://cost-off.seesaa.net/article/107494745.html

〜〜〜〜
参照:Wiki「ルパン三世 (TV第1シリーズ)」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%91%E3%83%B3%E4%B8%89%E4%B8%96_(TV%E7%AC%AC1%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA)
関連記事:Mさん話「アニメーターと演出」
http://cost-off.seesaa.net/article/104815245.html
Mさん話「魚眼レンズ効果」
http://cost-off.seesaa.net/article/139810859.html

・Mさん話「映画の文法、表現の方程式」
http://cost-off.seesaa.net/article/103435242.html
・Mさん話「映画とディレクターズカット」
http://cost-off.seesaa.net/article/98197272.html
・Mさん話「高畑監督」
http://cost-off.seesaa.net/article/108836115.html
・Mさん話「ジブリの後継者問題」
http://cost-off.seesaa.net/article/199375068.html
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2008年09月08日

Mさん話「宝島」

2008/08/01.駅前のファミレスにて。
 二ヶ月ぶりにMさんと会って、借りていた『宝島』と『ルパン三世1stシリーズ(緑ルパン)』のDVD−BOXを返した時の会話。
俺 「これ、ありがとうございます。『宝島』はすごい面白いですね!
   観る前は正直古い作品だし、大人になって今までかなり作品見ててCGとか色んな仕掛けも見てるから、Mさんが子供の頃に観たようには感動しないだろうと思ってたんですよ。
   そしたら、テンポが良くてさくさく進んで毎回いい所で終わるから、続きが気になって結局DVD1巻丸まる見ちゃうんですよw
   リンゴ樽で見つかりそうになるシーンとか絶妙の間で、見つからないってはわかってるのに観てて息が詰まるんですよ。だから、今日は1話だけにして寝ようと思ってるのに、どうしても観ちゃうんですよw」
M  「ほんとに毎回いいところで終わるんだよねw
   当時は放送を1週間待たないといけないから、来週まで続きが気になって仕方なかったよ。
   それでも、最終回の時には「ああもうジム達と一緒に冒険できないんだ」って思って寂しい気持ちになったよ。」   
俺 「僕も続きが気になるもんだから、かなり早く観ていったんですが、予告で「いよいよクライマックス!」って台詞があって、最後のDVDに交換する時には、「ああ最後の巻だ。あと2話観たら終わっちゃうんだ」って思って、もったいないから2日ぐらい待ちましたねw楽しみなくなっちゃうみたいな感じがしてw」
M  「これと『ガンバの冒険』を観て、俺はアニメ作りたいって思った作品だからね。
   今でも観る時は正座して観るよ。横になってとか、作業しながら流すとかできないよw」
 
俺 「僕はかなり小さい頃に再放送を姉と一緒にTVで観た記憶があるんですけど、なにぶん小さすぎてタイトルのドクロマークが怖かったとか、予告で「小さい子は一人で見ちゃ駄目だぜ!」って台詞を聞いて、姉に「なんで一人だと駄目なの?」「怖いからよ」って会話したのを覚えてるぐらいだったんで、実質今回が初めて見たのと一緒でした。
   なによりジョン・シルバーが格好いいんですよ!シャアを完全超えてますねw
M  「シャアとはまた別の格好良さだよね。
   富野さんが考えてる格好良さは、戦争やリアリティがかぶさってるけど、シルバーは理想の男の中の男って感じだよね。」
俺 「もう、台詞がいちいち格好いいんですよ。
   印象に残ってるのは、最後にイギリス帰る時に船底でジムに、
   「ずっと宝を探して見つけたが、あれはフリントの宝であって俺の宝ではなかった」とか、それ聞いて弱いシルバーは俺も嫌だなって思ったんですけど、口では負けたよって言いつつもまだ何か企んでる感じがするんですよ。
   今までも部下を全員失って自分も熱病にかかっても
    「取引だ。アンタ達は俺を殺せない。俺しか謎を解けないから、俺を生かすしかないんだ」
   ってもう完全に負けで死にかかってるのに負けてないって言ってたから、しかもまだ謎解けてなくて「解けたとは言ってない。解けるのは俺だけだと言ったんだ」って言ってたから、いくら弱っててもまだ何か仕掛けてきそうな雰囲気があるんですよ。」
M  「あの場面を演出した師匠に聞いたら、シルバーがこんなに弱音を吐くのは似合わないから台詞を全部カットしょうとしたら、シルバーの声優の若山 弦蔵さんが「監督、なんでカットするんですか?」って言ってきて、師匠が事情を話すと「やらせてください、その上でカットするかを判断してください。」って言って撮ったそうだよ。
   それでアフレコを聞いて師匠は「初めて声優に助けられた」って言ったそうだよ。」
俺 「そんな話があったんですか。確かに、シルバーはつながれて逃げることもできない。部下もいない。本国に帰ったら裁判にかけられる、完全に負けの状態だけどあの台詞を聞くと言葉では弱音を吐いてるけど、どっかでまだあきらめてないってのが伝わるんですよ。すごいですね。」
M  「シルバーの声優を担当した若山 弦蔵は、ショーンコネリーとかの吹き替えをやってて声優界の大物だよ。」
俺 「そうなんですか。」


俺 「だから、『宝島』の印象は主人公のジムよりも断然シルバーのほうなんですよ。」
M  「子供が見たらジムのほうなんだろうけど、大人が観ると俄然シルバーがいいよね。」
俺 「シルバーのあの格好いい台詞とかが一番の良かったですよ。
   幽霊船が来ても「俺は幽霊船なんか怖くないんだ」って一人で乗り込んでいったり、部下に裏切られて黒丸突きつけられても(注;黒丸は裏切り者は消すという海賊の合図)
  「黒丸はなあ、こんな汚いのに書いておどおど出すんじゃねえよ」って言って黒丸飲みこんだり、アンダーソンが宝箱のそばで死にそうになって周りが止めても、
   「好きにさせてやれ、俺と一番古いつきあいなんだ。あいつには宝を見る権利がある」
   とか、ジムに銃口突きつけられても
   「いつでも好きな時に撃ちなよ」とか、ほんとに渋いっすね。」
M  「でも、そのシルバーは4話ぐらいまで出てこないよね。」
俺 「そうなんですよ。一体いつ一本足出るんだって思ってたら、DVD2巻目からなんですよね。」
M  「普通は1話でチラッと出すよねぇ。でも出なくてもビリー・ボーンズ船長で話がもってるんだよね。」
俺 「出てくるのは船長の想像のシルエット像だけですよね。
   で、リアルなのが宝島の地図をジムが見つけても、すぐ出発どころか初めは子供だから船に乗せてももらえないですよね。結局、お金を出すスポンサーは大人だから、いくら地図持ってても役に立たない子供は乗せないってのが実にリアルですね。
   その辺は、原作のスティーブンソンの宝島の通りなんですかね?原作は読んだ記憶があるんですけど、全然印象ないですよ。」
M  「原作はつまんないよ。シルバーはあんなにカッコ良くないし、全然違うよ。」
俺 「やっぱりそうですか。小さい頃に家にあった児童世界名作全集に岩窟王とかと一緒の宝島があって読んだはずなんですけど、岩窟王は面白かったって記憶があるのに、『宝島』は島に着いたら反乱起こしたぐらいしか覚えてないですから。」
M  「アニメは原作の人物名と大筋だけ使って、内容はほとんど師匠のオリジナルだよ。」


M  「俺はグレーも好きでさ、グレーはすごくシルバーを意識しててシルバーに近づきたかったと思うんだ。最期も「シルバーおまえならどうする?」って言って死んじゃうわけじゃない?
   だから師匠に聞いたことあるんだよ。「グレーって名前は、グレー=灰色で、グレーを磨いていけばシルバーになれるって意味じゃないんですか?」って。」
俺 「いや、それはw」
M  「そしたら、それは考えたこともなかったって言われたよw」
俺 「それはちょっと考えすぎでしょうw
   あーでも、確かに色の名前が付いてるのはシルバーとグレーだけですね。それは気づかなかったですね。」
M  「俺もさあ、頑張っていけば、グレーを磨けばシルバーに近づくように師匠に少しでも近づきたいってのがあるから聞いただけど、あっさり考えたこともなかっただもんなw
   でもさ、シルバーが船員の補充で酒場とかで荒くれ者をスカウトする場面が観てると、師匠とか尊敬する監督がまた作品作るからってスタッフを集めてたら俺も呼んでくれよって思うのにかぶるんだよ。」
俺 「なるほどー、色んな見方ありますね。
   僕はグレーが最終回で「10年後にまた会おう」って言いながら、自分の国のアイルランドに帰るっていった場面でやばいっグレー死ぬんじゃないか?って思いましたね。
   だって今まで「分の悪いほうにつく性分でね」って言ってて、アイルランドって歴史的にずっとイギリスと紛争してるから、分の悪いほうにつくなら絶対アイルランド側に着いて死んじゃうんじゃないかって思ったら、ほんとに死んだから、グレーには生きててほしかった。
   あとは、最終回で成長したジムに酒場で会ったのにシルバーは知らん顔するじゃないですか?あれは名乗ってほしかった。」
M 「あの後にジムは、リブシー先生とトレローニさんにシルバーに会ったのに会ってないっていうのはさ、自分だけのジョン・シルバーにしときたかったんだよね。だから、シルバーを知らないリリーには会ったっていうんだよ。」
俺 「あー、あれはそういう意味だったんですか。それも気づかなかったですね。
   でも、リブシー先生とトレローニさんも散々シルバーは裏切り者って言いながら、「新しい宝地図があっても、もうシルバーはいないんですよ。シルバーあっての宝探しだったんですよ」って話すじゃないですか。あれもなんだかんだ言ってシルバーを認めてるんだなって思いましたよ。」

俺 「これ今再放送しても視聴率取れますよ。絵も古い感じしないですし、よく動いてるし。」
M  「う〜ん、一本足とか色々言っちゃってるからね。子供向けの割りに人も結構死ぬしね。」
俺 「でも、その一本足のシルバーが一番強くて格好いいんですけどねw松葉杖なのに異常に速いしw」
M  「そうだよねwあの速さはありえないよねw」

  Mさん話「緑ルパン」つづく
http://cost-off.seesaa.net/article/106965438.html

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2008年08月16日

Mさん話「アニメーターと演出」ver.1.2

     『アニメーターと演出』
     
 Mさんにアニメの絵コンテを見せてもらった時の話。

俺 「絵コンテのコマの横にあるのは秒数ですか?コンマ何秒まであるんですけど。」
M  「そうだよ。そのカットは何秒でという指示がないと、台詞をさっと言うのか、ゆっくり言うのかがわからないからね。」
俺 「コンマ2桁までストップウォッチで計りながら、コンテ描いていくんですか?」
M  「秒数がきっちり合わないと尺が合わなくなっちゃうからね。」
俺 「コンテ描いてカット割して、台詞も自分で言ってみて時間も計ってトータルの時間も計算してってやってたら、コンテだけでも何日もかかりますね。脚本からコンテ、絵、アフレコって作業を考えたら1週間で1本のアニメってできないですね。」
M  「だから今は週ごとにローテーション組んで何班にも分けてやってるんだよ。
   でも師匠は、毎週一人で脚本とコンテやってたからね。だからああいう人はもう出てこないだろうって言われてるよ。」
俺 「一体いつ寝るんですかw」

〜〜〜
俺 「でも、僕が感心するのはガンダムのモビルスーツ(以下MS)の戦闘シーンとかよく考えますよね。毎回新しい戦闘シーンがあって、よくアイデア出てくるなーって思いますよ。
   脚本は前に見せてもらいましたけど、結構あっさりしててこれだけ読んでも面白くないなって感じなんですけど、戦闘シーンは絵コンテで全部描いてるんですか?」
M  「コンテで絵が描ける人は描くね。脚本や打ち合わせで、この武器を使ってとかある程度の指示はあるけど、どう表現していくかは演出の仕事だからね。でも、絵が描けない人や指示が少ない場合はアニメーターに任せることもあるよ。」
俺 「コンテ描いてなくても絵はできるんですか?しかも前にやったパターンじゃない戦闘シーンを。」
M  「だってさ、今アニメーターになってる人は、ヤマトやガンダムを観て育ってあれをやりたい!作りたい!って思ってアニメーターになってるわけだから、そりゃあもういくらでもアイデア持ってるよw
   それがやりたくてアニメーターやってるんだから。
   サンライズには優秀はアニメーターが何人もいるからね。ここで撃った後にこう宙返りして・・とか、何分間ぐらい激しい戦闘でやってねって任せたらいくらでも派手な戦闘シーンを作ってくれるよw」
俺 「そうか、それを作りたくてアニメーターになってるからいくらでもアイデアがあるんだwやっぱり憧れて入ってるもんなんですね。
   でも、任せれるんなら楽ですね。」
M  「いや、そうもいかないよ。いくら戦闘シーンが派手で盛り上がるところだとしても、1本25分の話で10分も15分も戦闘ばっかりだと飽きられるし、なによりドラマが進まないでしょ。」
俺 「あーそうですね、戦闘シーンは長くても10分はないですね。最後の大決戦とかなら長めですけど。確かに戦闘ばっかだと話が進みませんね(笑)」
連ザも1ゲーム180〜210秒設定だけど、ちょうどいい長さだ。
M  「だから、さっきのタイムウォッチの話じゃないけど、演出がちゃんと時間計っていかないと、肝心のドラマの時間が取れなくなっちゃうんだよ。
   それに戦闘シーンは味付けであって、本当は人間ドラマのほうを伝えたいんだよ。
   モビルスーツのカッコ良さとかじゃなくてさぁw」
俺 「あははwそれは大人になって気づきました。MSは特殊な戦車の位置づけで、目的は戦争を舞台にしたドラマだって。
   ターンAもあのデザインでOK出たのは、MSのカッコ良さで勝負しないんだって意味だってw」
 確かにメインは人間ドラマで、戦争の意味であったり、主人公の成長だったりなんだろう。でも、一方でスポンサーのプラモやゲームの売り上げなどの商業的な要素も絡んでくるわけだから、作り手は大変だ。
 ちなみにファーストガンダムを小さい頃に見た時は、ギレンの演説の意味がわからず早く終わって戦えよ〜と思ってたが、今はあれはジオンの勢力範囲も示しているとわかってすごいなと思った。
 演説の内容は同じでも、聞いてる相手が宇宙全世界放送から最後は要塞にいる現場の兵士だけと段々狭まってくる。ジオンが追い詰められていることが言葉なしでわかる。 

〜〜〜
俺 「でもすごいですね。絵コンテだけ見ても素人なんでト書きとか意味不明なのが多いですよ。
   プロはこれで意味わかるんですよね?」
M  「いや、コンテ渡しただけで演出の意図が全部通じるのは2割ぐらいかなあ。」
俺 「え?2割ってことは、8割は通じないってことですよ?」
M  「うん、通じないねえ。わかってくれないよw」
俺 「それはどうするんですか?」
M  「当然打ち合わせして説明するんだけど、まず絵コンテ全体を読んでなくて、自分の担当のところしか見てないから演出の意図がわからないってことが多いんだ。打ち合わせで大体はわかってもらえるんだけどね。」
俺 「えっ、絵コンテを全部読まないで絵描いちゃう人がいるんですか?設計図みたいなもんじゃないですか。」
M  「設計図なのに全体を読まない人はいるねぇ。
   そうだなあ、プラモデルを作るのに手の担当の人、足の担当の人って分担して作るって考えてもらうとわかりやすいけど、手の担当の人が手の設計図しか見ないで作っちゃうのと同じだよ。
   当然作れるけど、全身が完成した図を見てないから、全身の中でどういう感じの手にすればいいのかわかってないんだよ。」
俺 「確かにそうですね。手が異常に目立ってもおかしいし。」

M  「コンテ全体を読めば、流れや伏線から自分のカットの演出の意図がわかるんだけど、読まずにやっちゃうんだよ。
   すごい有名監督でも「コンテをちゃんと読みましょう。全部でなくてもいいから、せめて自分のところの前後はちゃんと読んでください」って言うぐらいだからw
   ここがわからないって質問がくればこっちも説明するけど、質問がないから伝わったんだなと思ってたら、全然理解してない絵が上がってくることがある。」
俺 「えーっ、そうなんですかあ。なんだか学校の先生が言うような台詞ですねw意図がわかってない絵だと使えないですよね。」

M  「例えば、ニヤリと笑うって指示にしても口元だけで笑うとか目だけで笑うとかあるのに、伏線の張り方みたらここでこんな笑い方しねえぞって絵ができてくる。
   こっちも時間かけてコンテを描いて、ちゃんと中に演出の意図を書いてるのに、全然わかってない絵が上がってくるから困るんだよ。全体読めばわかるだろ、そんな笑い方してたらおかしいだろ、コンテ読んでよって。今も怒鳴ったりしないけど、昔は怒って書き直しの指示出したりしてたよ。
    でもね、コンテを見て一発でわかる2割のほうは優秀なアニメーターとして成長していくんだよ。それは間違いないよ。」
俺 「なるほど、コンテ読める人はできる人なんですね。」

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2008年07月23日

Mさん話「映画の文法、表現の方程式」

M  「僕は北野武作品が好きなんだよ。なぜかっていうと、映画の文法を無視した表現をしてるからなんだよ。」
俺 「ビートたけしは今は賞取って有名ですけど、元々映画は素人だったじゃないですか。」
M  「素人だから表現のルールに縛られないっていうか、文法や方程式を無視して撮ったからすごいんだよ。」
俺 「えー、そんなすごい表現してましたっけ?僕が知ってるのは海外で賞を取った・・、あの最後に海辺で拳銃で自殺しちゃうやつ・・ありがとうって最後に言って、岸本加世子が出てた・・」
M  「なんだろう?HANA-BIかな?」
俺 「そうです、HANA-BIです。考えたら岸本加世子は北野作品によく出てますねw
   それぐらいですよ、良くて印象に残ってるのは。3-4x(『3-4x10月』)なんて夢オチだったじゃないですかw」
(『HANA-BI』(はなび)は、1998年公開で第54回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞ならびに第41回ブルーリボン賞作品賞受賞作品。)

M  「ちょっと専門的な話になっちゃうけど、映画でもアニメでも表現にはルールがあるわけだよ。
   例えば、銃でも何でもこれを使うなら、使う前にこれ使うぞ使うぞって意味でクローズアップしたり、腰に手をやったりして説明的な画があるんだよ。それ無しだと何を使ったのかわからないってことになるから

   でもたけしは、素人だった故にそういう文法、武器を使うならシグナルを出すっていう方程式を無視していきなりやっちゃうんだよ。あれはすごい事だよ。下手したら何やったかわかんないからね。
   でも実際の殺し合いとかはそうだと思うんだよ、いちいち武器を見せ付けてるわけないから。だから文法は無視してるけどリアルなんだよ。」
俺 「あ〜、HANA-BIの海辺にヤクザが取立てに来た時もそういうシーンありましたね。 
   たけしとヤクザが対峙して、次のシーンは殴る音と靴下だけがちょっとだけ映って、もうヤクザは追ってこないっていう。あれも僕はわけわかんなくて、友達になんでヤクザはやられて靴下を映すんだ?って聞いたことありますよ。
   そしたら友達は、「あれは靴下に石か砂浜の濡れた砂を詰めて殴ったんだよ、砂か石かはわからないけど、砂でも詰めて殴られたらすげー痛ーよ。」って教えてくれたんでわかりましたけど、画面だけみてもたけしが殴るシーンもないし、後で靴下だけ映してもそれが武器だってわからないですよ。ケンカ慣れしてるならともかく。」

M  「そうならないためにも普通は表現にも文法や方程式があって、みんなそれ通りにやってるんだよ。
   方程式を因数分解みたいに解いてさ、そうすると無難にちゃんとみんながわかるように表現できるけど、先が読めて予定調和だって言われちゃうんだよ。
   だけど、たけしの映画はそういう文法を無視して作ったから斬新だったんだよ。」
俺 「でも、題材がヤクザ・刑事・暴力の3点セットがほとんどじゃないですかw『菊次郎の夏』だけ違いましたけど、HANA-BI以外はパッとと名前出てこないですよ。」
M  「そうだね、エンターテイメントじゃあないよね。万人受けするかって言われたらしないよね。
   ハリウッド映画も必ずカーチェイスとか爆発とか派手なシーンを入れてるよwだけど10本観ても楽しい。たけしの映画は2〜3本も見ればもうお腹いっぱいになるよねw
   でも、俺は好きだね。だって表現の方程式を無視するってなかなかできないよ。」

俺 「今でもそうなんですか?今は色んな監督が出て海外からも評価されてますけど。」
M  「文法(方程式)を使えば確実に伝わるからさ。見るほうもそれに慣れてくれてるし。
   例えば、主人公が愛する人を失って悲しいって場面は、大体曇ってて雨が降ったりしてるでしょ?
   あれは背景が主人公の心情を説明してるんだよ。内面を隠喩してるんだ。
   それが主人公が泣き崩れてるのに、周りが夏の真昼間のビーチでワイワイ楽しそうにしてたらおかしいだろ?」
俺 「そうですね、横でビーチバレーやってたら背景間違ってるなって思いますねw
   大体、雨が降って追い討ちをかけるみたいなイメージですね。」
M  「でも現実を考えたらさぁ、主人公が泣いてる場面にいっつもいっつも曇りとか雨が降ってるわけないじゃない?
夏のビーチにいる時に訃報が来ることもあるだろうし、周りが楽しい中で一人泣いてる人がいてもいいわけじゃない。みんな楽しい中、俺一人だけこんなに悲しいんだっていう表現があってもいいわけなんだよ。
   でもそれを実験的にやっても、観てる側に背景間違えてるよって思われるからできないんだよ。」

俺 「見る側にとったら、この場面は実験的な表現してるなんてわかりませんからね。単純に背景を間違えたのか、ちゃかしてんのか?って思いますね。」
M  「だから、文法を無視するってのは冒険なんだよ。
   例え、それやっても理解されなかったら映画全体に影響出るし、観てる側には実験なんて関係ないから、実験ならよそでやってよってことになるからね。」
俺 「う〜ん、そうですね。一場面であそこだけ意味わからないってなると流れ的にまずいですしね。確かに冒険ですね。」
M  「誰かが文法を崩した表現をして、それが受け入れられたら新しい表現を開拓したことになるんだ。
   最近はたけしも映画を勉強してきてて、色んな手法も出てきて固定概念を越えてきてるから両者が近づいてきてるけどね。」
俺 「近づいてるんですかw」

M  「昔、必殺仕事人で殺し屋が依頼を受けて、目的の屋敷に移動するって場面をあんまり意味ないから省略して、もう一気に戸を開けたら場面が変わって屋敷に着いてるってことをやったんだよ。
   今の人なら映画とか色んなのを観てるから移動を省いたって伝わるじゃない、でもこれがお年寄りから仕事人は隣の部屋に住んでたんですか?って誤解されたって話があるんだよ。」
俺 「え〜っwそんなのわかりそうなものじゃないですかww隣なわけないじゃないですか(笑)」
M  「でも、お年寄りには伝わらなかったんだよw確かに、画面だけ見てたら隣に住んでたってとれるからね。
   結局、次から移動のシーンのシュタタタッてのをまた入れるようになったんだよ。
   方程式ってのはやっぱり必要なんだよ。」
俺 「確かに、見る側は色んな人が見ますからね。僕も移動の省略はわかりますが、靴下が武器ってのはわからなかったですからね。
   野球もただ結果だけ見て楽しむ人から、野球経験者は配球まで見るってのも違いますしね。
   方程式は方程式で必要なんですね。」
   
2008年5月、駅前の居酒屋にて。

〜〜〜〜
<関連記事目次>
・Mさん話「江頭2:50とお笑い」
http://cost-off.seesaa.net/article/97482630.html
・Mさん話「映画とディレクターズカット」
http://cost-off.seesaa.net/article/98197272.html
・Mさん話「原作付きアニメ化」
http://cost-off.seesaa.net/article/100823059.html
・Mさん話「アニメーターと演出」
http://cost-off.seesaa.net/article/104815245.html
・Mさん話「宮崎監督作品」
http://cost-off.seesaa.net/article/103052906.html

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2008年07月17日

Mさん話「宮崎監督作品」

 7/19に宮崎監督作品の『崖の上のポニョ』が全国公開される。
それに関連して4-5月にMさんと居酒屋でトークした内容から抜粋。

 宮崎監督は何年かに一度劇場用長編アニメを作るが、予算が何十億円のプロジェクトで、普通に考えればプレッシャーはすさまじいはず。
 コケれば、この予算でこれだけの期間をかけてる以上言い訳もできないし、名前を前面に出してる以上すべての責任は当然宮崎監督に来る。
 でかいプロジェクトになればなるほど、予算や製作期間が十分与えられる代わりにプレッシャーやリスクは増大する。正直、肝っ玉が太くないとできない。だけど、アニメーターにとっては一生に一度はやってみたい部類の仕事だ。
 
M 「でも、そんな宮崎さんも一時期干されて仕事がなかった時期があったそうだよ。カリオストロの後ぐらいだったかな?」
俺 「えっ、宮崎監督もそういう時期あったんですか?」
M 「ナウシカの原作書いてた頃は仕事がなかったから、原作漫画描いてたそうだよ」
俺 「あれはアニメの仕事がないから漫画描いてたんですか?」
M 「だって、アニメの仕事が本業なのに漫画を好きで描くわけないと思うよw
  仕事がなくて、それで徳間書店がナウシカの原作でも描かないって声かけて、それから徳間とはつながりが深くなったって話があるから」
俺 「えーっ、だって今年もカリオストロはTVでやってるし、今日もナウシカやってますよ。ずっと順調に仕事が続いてるイメージしかないですよ」
(注:この日は地上波でナウシカが放送されてました。)

M 「カリオストロだって、今はすごい評価高いけど、発表当初は業界内じゃそんなに評価高くなかったんだよ」
俺 「確かに長猫(長靴をはいた猫)とかぶってるところはありますけど、言われるまでは全然気づかないですよ。今だと逆にカリオストロのパロディって思われますぐらいカリオストロが有名なんで。
   でも、言われてみればナウシカの漫画は、月刊連載なのに10〜12ページぐらいしか描いてなかった記憶がありますよ」
M 「そりゃあ、乗り気で描いてないからね。8Pも描いてなかったんじゃないかなw」
 どこかで連載中のを読んだ記憶があるが、ページ数があまりにも少なかったのを覚えている。

俺 「そういえば、ナウシカ2ってもう作らないんですかね?漫画のほうは、ナウシカの世界の結論が出てて結構好きなんですけど。」
M 「作らないだろうねえ。『もののけ姫』作っちゃったからねえ。あれが実質ナウシカ2でしょ?テーマが一緒だから」
俺 「あ〜、言われてみればそうですね。う〜ん、ナウシカ2も映像で見たかったんですが、確かにテーマが同じといわれれば同じですね。」

M 「宮崎さんの作品で一番何が好き?」
俺 「それはラピュタですね。冒険活劇で結末もすっきりしてて爽快感あるし。原作はガリバー旅行記ですけど、もう全然違うじゃないですか」
M 「うん、そうだね。原作とは完全に違う宮崎さんのラピュタになってるよね」

 当たり前のように宮崎監督作品を見ているが、男女年齢に関係なく受け入れられる作品ってよく考えたらすごいことだ。一部のコアなファンだけってわけでもなく、世界中で通じる作品ってのはそうは生まれない。
 何年かに一作品は黙ってても発表されるから、これが普通だと思ってるけど、それはとても幸運な事なのではないだろうか。

〜〜〜〜
関連記事:Mさん話「ジブリの後継者問題」
http://cost-off.seesaa.net/article/199375068.html
Mさん話「高畑監督」
http://cost-off.seesaa.net/article/108836115.html
K合さん話「ジブリの美術監督」&『海がきこえる』
http://cost-off.seesaa.net/article/159056951.html
まとめて読む→アニメ業界話・作品話(Mさん話)カテゴリー
http://cost-off.seesaa.net/category/8611452-1.html

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2008年06月17日

Mさん話「原作付きアニメ化」

俺 「漫画の原作付きのアニメ化ってあるじゃないですか。
   あれでよくオリジナルの話が入ってくるんですけど、原作者に毎回許可って取って作るんですか?」

M  「アニメ化の前に出版社の人とかと打ち合わせはするんだよ。
   その時に内容の打ち合わせしてから作るんだ。そこで要望とか条件のすり合わせしてやるから、大体すんなりいく。
   でも、やっぱり中には原作者からの注文で、監督は誰だれで、作画はこの人、声優はこの人がいいっていう注文が多い時があるよ。めったにないけどね。 
   だって、全部聞いてたら予算オーバーになって作れなくなっちゃうから」

俺 「そうか、予算か。まあ、名前が出るってのは大物監督に決まってますからね。
   そうなると、もうアニメ化の話は流れちゃうんですか?」

M  「いや、まず企画した出版社が原作者を説得するんだよ。企画を持ち込んだのは出版社だからね」

俺 「あ、出版社がアニメ化の話を持って来るんですか」

M  「そうだよ、だってアニメ化したら本が売れるからね。出版社が本売りたいからアニメ化するだよ。
   こっちは、持ち込まれた企画を予算とスケジュールなどを考えて返事する立場だから」

俺 「アニメ化の目的って本売るためなんだ。そういえば、釈由美子のドラマでそういう話ありました。出版社が金儲けでアニメ化するって話が。
   でも確かに仕事、ビジネスだからまず予算と人員、納期が決まらないと作りようがないですね」

M  「今はもう原作者がアニメ観て育ったアニメ世代だからさ、アニメのスタッフや声優にも詳しいんだよ。自分がファンだった監督に作ってほしい、自分の好きな声優にこのキャラ演じてほしいっていう気持ちがあるんだよ。
   自分の作品だから当然思い入れがあるし、ファンの手前これは変えないでほしいってのはわかるんだけど、アニメと漫画は手法も違うし、予算無視しては成り立たないから全部は聞けないんだよなあ。
   元々、アニメと漫画は別物と思ってほしいんだよ。昔は全然うるさくなかったんだよ」

俺 「え?昔はそんなにうるさくなかったんですか?」

M  「昔の作品で原作者からのクレームが来たなんてあんまり聞かないよ。
   『巨人の星』や『あしたのジョー』の原作者の梶原一騎なんて、一言も口出さなかったらしいよ」

俺 「梶原一騎って名前からしてコワモテで、プライド高そうなイメージなんですけど」

M  「そういうイメージがありそうなんだけど、アニメは別物と考えて一切口出ししなかったって聞いてるよ。
   たぶん観てなかったんじゃないかなw」

俺 「観てないんですかw」

M  「だってさあ、アニメと漫画って全然作り方違うよ。手法が違うのに同じ物を作ってもしょうがないじゃない。同じ物観たいんだったら、漫画のほう読んでよって思うし、原作との違いを楽しんでほしいよ」

俺 「要は、違ってても面白ければそれでいいと思いますよ。
   あくまで、原作のファンでイメージを壊すって怒るぐらいなら観ないほうがいいですよ。
   僕は京極夏彦の京極堂シリーズが好きですけど、映画化(実写)したのは観てないですよ。2時間で、あのちょっとした辞書みたいな分厚い原作を再現なんかできないですから。絶対はしょってやるしかないんで。
   ネットの映画レビューみても原作ファンが5点中2点台とかつけてるのみたら、わざわざ観て悪口まで書かなくてもわかりそうなのになって思いますよ」

M  「あの原作をまんま映像化するのは無理があるよね」

俺 「だから、京極夏彦はインタビューで
 『映画化しょうがしまいが小説には何の関係もないし、映画は読者である実相寺監督のイメージで作られたものであって、僕が文句を言う筋合いはない。ほかの読者も文句を言うべきではない。実相寺作品として観て面白かったか、面白くなかったかでいい。
   僕が映画化を許可したのは実相寺監督のファンだから。映画は実相寺監督の作品を一ファンとして十分楽しめた。原作と違うというのは間違ってる。』(R25等より)
って言ってるんですよ」

M  「そんなこと言ってたんだ。いい事言うねえ、流石だね。
   その実相寺監督(実相寺 昭雄)はウルトラマンとかでめちゃめちゃ有名な監督で、あの監督の作品を見て影響を受けてない者はいないって言われてるぐらい有名だよ。
   庵野さんもモロその世代で、エヴァの演出にも実相寺監督の演出方法をそのまんま使ってる部分があるよ」

俺 「それかなあ、昔、週刊誌で『エヴァンゲリオンと実写の似てるシーン』っていう特集で、魚眼レンズ効果はウルトラマンのこのシーンからとか集めてて、よく調べたなーって思ってましたよ」

M  「いやいや、似てるんじゃないよwそれを狙って、これをやれ!って意図でやってるんだよw
   同じじゃないとNGってノリだよ。知ってる人が見たら一発でわかるよw」


俺 「もうあれは無意識に似たんじゃなくて、元々狙ったんですかw」
 確かに僕もガンダムのパロディだったら見たらすぐわかるなw

(注:京極夏彦原作の『姑獲鳥の夏』(2005年公開)の監督は、実相寺昭雄。翌2006年に実相寺監督は死去。そのため次の『魍魎の匣』(2007年公開)の監督は原田眞人に交代した。)

M  「さっきの梶原一騎なんだけど、『巨人の星』でオズマっていう黒人の外人助っ人が出るんだけど、原作ではアメリカに帰ってそれで終わりだけど、アニメだとその後の話『オズマの死』があるんだ。
   アメリカに帰ると、オズマはスラム育ちだからスラムに帰るんだけど、スラムの住人から『白人に尻尾振って野球やって白人の手先となって戦争にいくのか!』って言われて非難されて、その後ベトナム戦争に行くんだけど、白人からは差別されて激戦地に送られる。そこで負傷して日本を経由して帰国することになる。

   帰りの経由地の日本で星飛雄馬と再会して、ボロボロの体で勝負して大リーグボール2号をバットに当てて、でも飛ばすことはできないんだけど、飛雄馬から『おまえは初めての対戦でバットに当てた』って言われて満足して帰国する。その後、飛雄馬にオズマの妻から『オズマは帰国して死んだけど、あなたと勝負できて喜んでた』っていう手紙が来る話があるんだ。
   これなんか完全にアニメのオリジナルの話だからね」

俺 「え?オズマが死ぬってのは原作にないんですか?」

M  「ないよ。初めに日本に来て帰国したってことしか書かれてないよ」

俺 「スラム育ちとかベトナム戦争に行ったとかもないんですか?2度目の来日も?」

M  「ないない。だって帰国した後は何にも書かれてないから」

俺 「えーっそこまでオリジナルなんだ。それで何にも言われないんですか?」

M  「勝手に殺すなとか苦情が来たとかは聞いたことないねえ。
    たぶん、アニメは自分の作品じゃないっと考えてたんじゃないかな」

俺 「でも、その後のオズマの話は面白いですね。最後だけ飛雄馬が出て、ほとんどオズマの話ですよね。主人公がちょっとしか出ないなんて」   

M  「面白かったし、野球漫画でスラムとか黒人差別とか戦争を描いちゃうんだぜ。もうワクワクして観てたよ」

俺 「そういう面白い話なら、全然原作にないオリジナルの話でもいいですね」

M  「まあ、大体はすんなり(アニメ化は)いくんだよ。自分の漫画が動いて声が出るのをうれしがってくれる原作者もいるし」

M  「医者や漫画家は『先生』で、アニメーターはいくら頑張っても『監督』としか呼ばれないの知ってる?」

俺 「あっ、そういえばそうですね。宮崎監督、富野監督とは言いますが宮崎先生とは言いませんね」

M  「漫画は極端に言えば、漫画家がいないと作品はできないけど、逆にいえば自分一人いればできる。でもアニメはいくら監督監督って言われても、一人じゃ作品はできないからどんなにえらくなっても監督なんだ。先生とは呼ばれないね」

 筒井康隆は「SF作家の先生は絶対カタカナでセンセイと呼ばれて馬鹿にされてる。」って自虐的に言ってたけど、アニメーターは確かに先生ではなく監督だ。 

M  「アニメの場合は、皆で作品を作るからさ。いくら監督って言ってもスポンサーやスタッフに『今度監督やらさせてもらいます、何とかです』って挨拶するんだよ。一人じゃできないからね」

俺 「あははwじゃあ、アニメの監督って結構気を使うんですね」

M  「そりゃ、そうだよ。一番気を使って頭下げてるよw
   スタッフにも『君、これうまいよ!この調子でやってね!』っていい所があったらほめてさ。いい仕事してもらわなきゃ、いい作品できないからね。大変だよ」   

俺 「えー、監督ってもっとこう、どっしり構えて指示出してるだけかと思ってたんですけどw」

M  「そんな監督めったにいないよw」



〜<本文の会話の追加>〜
M  「原作者の注文で、中には自分の絵を変えないでやって欲しいっていうのがあるんだ。  
   ほら、アニメ用のキャラの描き方じゃなくて、自分の絵をまんま動かして欲しいってのが」

俺 「それは無理じゃないですか。線の数もメディアも違うし、まったく同じってわけには」

M  「いや、今はアニメーターの技術がすごいからね。やろうと思えばできるんだよ。
   『マスターキートン』って知ってる?あれなんか漫画とそっくりな絵で動いてるからね」

俺 「僕、漫画全部持ってますよw実家に。確かにレンタルのパッケージ見る限りはそっくりでした」

M  「でも、それやるとかなり大変な作業になると思うんだ。負担が大きいよ」

俺 「でも技術上は可能は可能なんですね。それはそれですごいですね」


Mさん話「特撮話ウルトラマン・ウルトラセブン」と
http://costblog2.blog24.fc2.com/blog-entry-401.html
Mさん話「メトロン星人〜狙われない街〜」「実相寺昭雄」につづく
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Mさん話「巨人の星@」
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Mさん話「巨人の星Aオズマの最期」
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Mさん話(閑話休題)「Mさんのオススメ、タイガーマスク」ver1.2
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Mさん話「宮崎監督作品」
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