2010年10月14日

龍馬伝41回感想「さらば伊勢谷晋作」(ver.1.01)

龍馬伝30,32,33回感想「主役を食う配役・伊勢谷の高杉晋作、泰造の近藤勇3」
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龍馬伝38,39,40回感想「霧島ハネムーン、小倉口の戦い、青木の後藤象二郎」の続き。
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    龍馬伝41回感想「さらば伊勢谷晋作」

 この回は素直に良かった。龍馬伝の中でも必ずトップ5に入る出来だろう。
冒頭の海援隊の旗揚げや後藤と長崎奉行所のシーン、筧利夫の三吉慎蔵の再登場、弥太郎の「心配ご無用!」の竹中秀吉のパロディとかいろいろあるが、やはり今回の主役はタイトル通り伊勢谷友介の高杉晋作だ。

 同じ大河ドラマの『新撰組!』(2004年)では、高杉晋作は姿も出ないで京都で
「いよおっ!征夷大将軍!」
と将軍をからかう野次を言って、香取慎吾の近藤勇に「きつね目の男」と言われて追いかけられるだけで、
幕末〜明治初期の薩摩藩が主役の大河ドラマ『翔ぶが如く』(1990年)では、高杉はナレーションだけの説明で配役すらなく、登場もしなかったが、『龍馬伝』では違った。こんなに格好いい高杉は初めてだ。幕末のドラマ史上最高の高杉と言っていい
 ちなみに『竜馬におまかせ!』(1996年、日テレ)では、寺脇康文演じる高杉はエリート意識丸出しのキャラで
「俺に(直接)話しかけるな」
という、とんでもない勘違いアホキャラだったw東京出身の脚本家の三谷幸喜が書くとこうなる。三谷は『新撰組!』といい、幕末物を書くのは向いてないと思う。

 吉田松陰の刑死、池田屋の変、蛤御門の変(禁門の変)、英・米・仏・蘭の四ヶ国連合艦隊との下関戦争、朝敵の汚名と第一次長州征討、と敗戦に敗戦を重ね、ボロボロになった長州。 
 多くの人材を失い、桂小五郎も行方不明の中、高杉は一人功山寺で決起し、幕府に屈服した俗論党との藩内クーデター戦を起こし、俗論党を倒して長州を倒幕に統一した。
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功山寺で決起する高杉晋作

 そして、桂を呼び戻し、町医者出身で身分の低い大村益次郎の登用など生き残っている人材をかき集め、長州は再び反幕府ののろしを上げる。その後、龍馬たち亀山社中の仲介で武器・軍艦を購入し、薩長同盟を経て、第二次長州征討(四境戦争)では亀山社中や全国の脱藩志士の力を借りて幕府軍を押し返し、ついに小倉城を攻略した。

 だが、病を押して対幕府戦を指揮した高杉は倒れ、第二次長州征討後は療養生活に入る。短い療養生活の末、当時は不治の病だった結核で維新を見ることなく天に昇った。享年29歳。
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功山寺挙兵の高杉晋作像

 長州が薩摩や土佐と完全に違うのは、幕末に当初から尊王の旗を振り続けたことだが、高杉がいなかったら、第二次長州征討の前に俗論党が牛耳ったまま幕府に完全に屈服し、尊王の旗を降ろしていたのは間違いないだろう。
 
 確かに、三谷幸喜が書くように史実の高杉にはエリート武士としての意識はあっただろうし、奇兵隊や諸隊にも身分の問題はあっただろうが、結果として高杉の作った奇兵隊と病を押して戦った高杉がいたから幕府軍に勝利し、奇兵隊や諸隊の存在により長州は他藩に先駆けて四民平等、身分制度撤廃の意識をいち早く持ったと言える。

 司馬遼太郎は、馬関の戦い(小倉口の上陸作戦、小倉城攻略)について、『竜馬がゆく』で
「奇兵隊が勝っちょるんじゃない。百姓が武士に勝っちょるんじゃ」
という台詞を竜馬に言わせている。

 『龍馬伝』の伊勢谷晋作に話を戻す。
「今日はええ日じゃ」の海岸のシーンは実によかった。映像的にも台詞的に劇中の桜の頃のような暖かさが伝わってきた。
 台詞の福山龍馬の「奇兵隊には身分の差らぁなかったがじゃ」の台詞は、どっちかというと身分の差がなかったのは龍馬の亀山社中(海援隊)のほうだろうけど、
「侍も商人も百姓も一緒になって、自分の国を守ろうとしちょった。これこそが、新しい日本の形じゃと確信したがぜよ」
 この台詞は、土佐の郷士(下士)という、侍だけど上士から厳しく差別されていた身分にいた龍馬の気持ちがすごく表されている。
(坂本本家は元は豪商で、郷士の株を買って侍になった。逆に弥太郎は父親が郷士の株を売ってしまって、地下浪人からスタートした)

 一方、伊勢谷晋作
「僕の出番はもう終わりです。あとは酒を飲んで三味線を弾いて、面白おかしく暮らしたい。あの世でね・・高杉晋作はそういう男です」
「・・そうかえ」
高杉と龍馬は海を見つめる。
「今日はええ日じゃ」
「まっことッ・・えい日じゃ」(まっことは土佐弁で「本当に」の意)
といって、二人で笑い合ってキラキラ光る海を見るシーンは抜群に良くて、二人とももう会えないとわかっているのに明るく笑う。

 それが最後に海で一人ぼっちの高杉に泣かせるシーンにつながって、高杉はきれいごとじゃなくて、本当は生きていたかったんだろうという長州出身の脚本家の思い入れがいっぱいの最高のシーンだった。久々にちょっと泣きそうだった。
 奇兵隊だった農民との花見のシーンも高杉の台詞はないのに、演技で十分すぎるほど高杉の気持ちが伝わってくる。

 有名な高杉の辞世の句
「面白く 無き世の中を 面白く」
をあえて使わずに、脚本家の高杉晋作はこういう男だという高杉晋作像が出てて本当によかった。
 逆にやればできるのに、薩摩のあたりは手を抜いたか、薩摩がほんとに嫌いなんだろうなあって思うぐらいだったw
 ハズレの回もあった龍馬伝で後半の一番あたり役だった高杉晋作。
最後は、念願の船を得て出航する海援隊(画面フィルターはブルー)と、一人ぼっちになって海岸で泣く伊勢谷晋作(画面フィルターはレッド)の対比がうまい。この場面の三味線をからめた音楽もいいし、伊勢谷のよだれも波に抗う力もない演技もリアルだ。
龍馬「どんな時でも前に向かわにゃいかんがやき。
   高杉さん・・ありがとうございました」
晋作「坂本さん、頼みましたよ」
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ありがとう、伊勢谷晋作。

 ちなみにこの回の演出は大友啓史で、大友は
第29回「新天地、長崎」
第33回「亀山社中の大仕事」
第36回「寺田屋騒動」
第39回「馬関の奇跡」
第41回「さらば高杉晋作」
を担当している。当たりの回はほとんど大友演出だった。
 なるほど、演出によって出来はやっぱり大きく影響するんだな。てことは、次回は微妙なのか?
中岡慎太郎の陸援隊は次回の感想に。

龍馬伝関連「中岡慎太郎(前編)、天誅組の変」につづく
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【大河ドラマ】『花燃ゆ』、伊勢谷友介の高杉晋作と吉田松陰
http://costblog2.blog24.fc2.com/blog-entry-655.html

奇兵隊・諸隊の資料の参照:http://freett.com/sukechika/ishin/sonnoh/set05-2b.html
参照Wiki「龍馬伝」:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BE%8D%E9%A6%AC%E4%BC%9D

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関連記事:【2010年大河】龍馬伝キャスト発表【福山雅治】
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・Mさん話「演出の役割1」
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・Mさん話「演出の役割3−2」
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・Mさん話「演出の役割3−3」
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【目次】歴史&高知カテゴリー【龍馬関連記事】
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