2010年08月04日

【読書】『悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記』『オシムの言葉』【オススメ】ver.3

 通勤や仕事の移動中はほぼ読書してるのだが、7月中に読んだ本でベスト1は、ぶっちぎりで
『悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記』 木村 元彦著(集英社文庫、2001/6/20)。
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表紙

 いろいろ説明したいが、「BOOK」データベースの概要は、

「世界の悪者」にされNATOの空爆にさらされたユーゴ。
ストイコビッチに魅せられた著者が旧ユーゴ全土を歩き、砲撃に身を翻し、劣化ウラン弾の放射能を浴びながらサッカー人脈を駆使して複雑極まるこの地域に住む人々の今を、捉え、感じ、聞き出す。特定の民族側に肩入れすることなく、見たものだけを書き綴る。新たに書き下ろした追章に加え、貴重な写真の数々。

「絶対的な悪者は生まれない。絶対的な悪者は作られるのだ」

 本文の最後の一行がテーマなのだが、湾岸戦争でもあった広告代理店による情報操作によって、これでもかと世界中から嫌われたユーゴ(セルビア人など)、某大国の世界戦略によって翻弄される国、民族、国民、そしてピクシー(ストイコビッチ)らサッカー選手にも容赦なくその影響が及んでいて、知らない事実ばかりだった。

 マスコミの報道ってけっこう世界的に大国のフィルターがかかってる。

 文庫版の210ページからの部分で、ピクシーは空爆の始まる祖国から脱出し、親や知人がシェルターに非難する中、日本で試合に臨む。

 祖国にNATOの空爆の中、Jリーグで活躍するユーゴの選手が維持を見せて闘い、全員が得点に絡むあたりはユーゴ人の意地を見た。ここからの何十ページは圧巻の迫力だ。
 試合以外でも、母国へ、家族へ、友人たちの空爆への抗議をするユーゴ人たち。日本でもヨーロッパでも、たとえ抗議活動をサッカー協会から禁じられても、試合中NATOの加盟国出身の主審にその抗議行動でマークされて(目をつけられて)カードをつきつけられても彼らは抗議をやめない。

 上の表紙の写真のピクシーのTシャツには「NATO STOP STRIKES(NATOは空爆をやめよ)」とある。
212ページにその説明が出てくる。

引用すると、
「何度、水を向けても『スポーツと政治は別だから』と頑なにポリティカルな発言を避けてきたあの男が・・・・・・。
 否、とすぐに思い直した。これはもはや政治ですらない。『人を殺すな』というきわめて人道的な叫びではないか。
 ベオグラードにもアルバニア人も住む。コソボにもセルビア人もいる。あのちっぽけな国へ当事者でない大国が、国連決議もないまま最新兵器で空の上から一方的に爆弾を投下するのは『戦争』ではない。当のクリントンが糾弾していた『虐殺』そのものではないか」


 おそろしいまでの名文であり、なんでこの写真が表紙になっているかが理解できる。

 ユーゴのサッカーに魅了された著者がマスコミがほとんど伝えなかった真実、NATOの基地を作るために、ユーゴが主権国家としては絶対に認められない治外法権を認めよというアネックスB(付属文書)をつきつけ、交渉決裂(拒否)後の空爆の正当化、核のゴミである劣化ウラン弾の使用、化学工場の破壊による環境汚染、それらを正当化するためにユーゴは絶対的な悪者に仕立て上げられた。
 太平洋戦争時の手口とクリソツ。この手法は紛争地域に介入して、某大国が世界戦略の基地を作っていくやり方は今も健在。

 そういった背景を抱えながらも、サッカーはクラブリーグ、W杯、ユーロ2000と続き、ユーゴの選手たちはどのような思いで闘ったのか、取り上げればきりがないぐらいのすばらしい本。読むとセルビア人は民族浄化をやった過激な集団という作り上げられたイメージだったと気づく。
 俺の今年のベスト3に入る。

 Amazonのレビューでも☆5つが14、☆4つが3つになっているが、これは納得、俺も☆5つ。
世の中、ニュースに流れてる情報が正しいは限らない。
スポーツと政治は別なんてことは平和な国の言い分だとよくわかった。

あれだけいい内容の本なのに、アマゾンでは最安値が70円w
俺は持ってるのに。

 あと、同じ作者の著書『オシムの言葉〜フィールドの向こうに人生が見える〜』も良かった。

 ピクシーは選手としてユーゴの国と代表チームの崩壊を目の当たりにしたが、同時代にオシムは監督していた内容で、こっちもすばらしい本。
「情報戦に負け、世界中から悪者のレッテルを貼られた民族」
「この瞬間、それぞれの民族的立場は確かに対立し、フットボールをできな状況においやったのだ。片や武力(=包囲戦)に襲われ、片や政治(セルビア悪玉論キャンペーンに貶められた。」
 他民族国家ユーゴとその崩壊がサッカー選手に覆いかぶさってくる。
 サッカーだけなく、時代背景のユーゴ崩壊の話のバランスが実にうまく構成されている。
両方オススメ。

〜〜〜〜
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posted by コスト at 20:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・映画・ドラマ等レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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