キモト伝説「怒られるよぉ」
ある日の午後、大学南地区食堂隣の自販機コーナー。俺とS川は、講義や実験の合い間に時間がある時は、ここの紙コップの自販機でティータイムを取る。この自販機は70円と格安であった。
この日はもう実験も終わり、ゆっくりとティータイムで進化論について話していた。
「進化論は、進化を説明するものではなくてさ、生物の多様性についての説明なんだよ。『種の起源』には、多様性が生まれた過程で進化があったと考えるのが妥当だと〜略〜
でも、未だにアメリカのキリスト教系の学校じゃ進化論を教えてないんだろw神が創造したのが正しいって、学問と宗教は別だろうがw〜略〜」
「この前、東京で進化論学会に行ったら(当時S川は進化論の学会員だった)、DNA派と生物分類派がケンカしとったばいw」
と、知的な話を楽しんでるところへキモトがひょこひょこやってきた。
キモトはすでに「うるさい黙れ!事件」や「何がバッ!事件」を起こしているが、S川が追求すると「そんなことあったかなぁ?」というそ知らぬ顔でしらばっくれていた。
それでも気まずいのはわかってるらしく、最近は向こうからは絡んで来ることは減っていた。
そのキモトがひょこひょこやってきた。
俺とS川は一瞥をくれ、かと行って移動するわけでもなく、キモトの対応を見ていた。すると、
「掲示板に熊粋際(ゆうすいさい、学際のこと)の準備で集合するように書かれているよっ。」
と、掲示板の張り紙をまるで神のお告げだと言わんばかり言ってきた。
ちっ
俺は内心毒づいた。
せっかく俺とS川が楽しいティータイムで進化論を論じているところに、学際の準備に集合しろだぁ、掲示板を大義名分みたいに振りかざして何様なんだ。
S川を見ると、同じように「またか、コイツも変わらんね」という顔をしていた。
せめて進化論の話に入ってくるとか、ティータイムに加わって談笑するなら歓迎するが、俺達も毎日見ている掲示板の内容を「知らないだろうから、この僕がわざわざ呼びにきてやったんだ」と言わんばかりの態度だった。やれやれだ。
俺とS川はすでに学際の出店には参加しないことを話してて、キモトがワーワー言ってきたところでムキになって相手することもないので、二人して「行かない」と一言だけ返して、紙コップのコーヒーをすすった。
すると、キモトは
「3年生は集合って書いてあるよ!」
と、語尾を強くして「聞こえないのかっ!迷える羊どもめ、迎えに来てやったんだぞ!」と言う感じでリピートしてきた。
俺とS川は、めんどくさがりながらもう一度「だから行かんって」と答えた。
そして進化論の話を再開しょうとしていたら、またキモトはしつこく
「行かないと怒られるよぉっ」
と、ちょっと巻き舌で、小学生にでも言うかのように言ってきた。本当にやれやれである。
S川とアイコンタクトで「コイツ、一人で行きたくないからしつこく言ってるんだろう」とうなづき、これ以上ティータイムをつぶされたくないので、S川から
「俺はバイトで行けんって、もう伝えとうばい。」
と言い、俺のほうをキモトが見てきたので、
「俺は3年じゃない。行きたいんなら、キモト君一人で行ったらどう?
俺とS川は行かないって言ってるんだけど。」(注:S川とキモトは同学年だが、俺は一学年上)
と、言うとキモトは「ん”ん”ん”」と言い負かされたのが我慢ならないという顔をしながらも、以前二度三度怒鳴っているのでそこはブツブツ言いながらも怒鳴らずにひょこひょこ去っていった。
「なんだ怒られるってw用事があって学際出れないってやつを誰が怒るって言うんだ?大体、自由参加だろうがw」
「アイツ、一人で行ったら話し相手がおらんで間が持たんから俺ら呼びに来たんじゃ?
どうせY岡君が行かないとかで、一人じゃ居たたまれんから、反乱分子の俺らでも話し相手がいないよりいいから連れて行こうとか思ったんじゃ。
それでも「一緒に行こう」じゃなくて、「掲示板に書いてるよ!」とか「知らないだろうから僕が迷える羊どもを呼びに来たんだ」的な態度で、最後には「怒られるよ」って、もう聞いてて内心半笑いよw」
「ほんとバレバレだよ、アイツの計算なんて。相手するのめんどいけんビシッと言ってやったよ。
ほっといても自分からネタになりに来てるからなあw
大体、「怒られるよぉ」って脅しのつもりか?小学生かよw
二十歳超えてて誰がそんなんでビビんのよw」
「もうキモトにしたら精一杯の脅したいw
大体、俺らにそう言ったら言うこと聞くと思ってるとこが、もうそうとう下に見てるってことばい。
まるで群れから外れた馬鹿な羊を、羊飼いの僕が連れ戻しに来てやったって顔してたばいw「まったくコイツらと来たら・・」って顔たいw」
「もう今まで散々突っ込んで注意してやってんのに全然変わらんねw
それにアイツ、ここで俺らが飲んでる時に一緒に何か飲んだことないよな?」
「あっ、ないないw一回もないたいw」
「やろ。アイツ70円のコーヒーも堕落してるとか無駄遣いしてるとか思ってるんじゃ?」
「かわいそうやね、ここで楽しい話しながらの飲むコーヒーすら楽しめんとはw」
「70円云々じゃないんだよま。一緒に話しながら飲むからうまいんだよ。
「昨日はコーヒーだったから、今日はココアにしょう」とかさ、色々その過程にも楽しみがあるんだよ。
そりゃあ、無駄遣いとか思うのはキモトの勝手だけど、ここで立ち話しながらコーヒー飲んだってのも思い出の一つだし、それすらないってのは人生楽しんでるとは言えんね。例え、小銭がたまっても勉強しか思い出がない大学時代ってのはつまらんね。」
「いや、あいつは自分の世界では完全に神だけんw
キモトワールドでは、俺らのほうが異端で哀れな子羊やと思ってるんじゃ(笑)」
「だから注意しても全然変わらないのかw
でも、キモトワールドではY岡君ですらアイテムだからな、そんな世界でランク上がりたくないなw」
「まったくだん(笑)」
その後、キモトが学際に参加したかどうか誰も知らないw
つづく
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これも公開をお待ちしております^^
「何がバッ!事件」は、あまりの面白さに記憶にばっちり残ってるんで時間がある時に確実にアップします^^
一言で言うと、キモトがS川がいない時に他のクラスメートもいる前で爆発しますwしかもフィールドワーク中の立田山で。