2008年12月12日

S川版キモト伝説「牡蠣」後編

S川版キモト伝説「牡蠣」前編の後半部分(続きを読む)からの続き。
http://cost-off.seesaa.net/article/111079015.html

S川版キモト伝説はS川の作品(本文はS川、注釈は俺)で、キモトが主人公でキモト目線での世界が描かれている。前編の冒頭に説明あり。
以下、S川からのメールより引用。
〜〜〜

    『牡蠣』後編

そのとき、僕のアンテナがビビッとした。

用意周到の僕には油断が無い。
油断は無いが、これは危険である。
僕のアンテナは、先程乗り込んで来た乗客の内に危険因子が紛れ込んでいるのを
察知したのだ。

極悪非道の不良が乗り込んで来たのだ。
しかも二匹。

僕は不良が大嫌いである。
双方とも、ちゃらちゃらとしていて、髪を染めて、ピアスまであしらっている。
ずんだれたズボンを腰で履き、派手な色彩の下品な服装は、チンピラさながら、
まさに不良のそれである。

サラリーマン風男と茫然たる学生君、そして忌々しい老罵は、人畜無害である。
しかし、不良の場合は、百害あって一利なし。

不良は、知恵が足りない分、腕力に訴えるばかりの野蛮な人種である。
この客室に漂着しときた二匹もいつ何時かの僕に因縁をふっかけるか知れん。

僕が意気揚々と成功の階段を上がる最中に、奴らが嫉妬に狂って、成功の階段からこの僕を突き落とす暴挙に出ることはあまりにも有り得すぎる。
不吉な懸念が浮かんだとき、僕の脳裏に忌々しい過去が蘇った。

高等学校時代、僕は文○(注:高校名)なる石の上で過ごした。
石の上にも三年と云うけれども、不本意にして屈辱の三年間であった。

当然の如く新進気鋭の優等生たる僕は進学クラスにあって、高校教師からは一目も二目も置かれ、級友達は、天才とも秀才とも神童とも崇めたくらいである。
故に、級友の誰もが、この僕を畏怖してしまって、遊びに誘わないどころか、容易く口も聞けない様子であった。(注D)
寛大なる僕としては、下々の者どもとの交際を拒絶するつもりもなかったのであるが、如何せん、この僕ときたら、彼らが畏怖するほどの神聖な領域に縄張りしていたようであるから致し方あるまい。
いつの世にあっても、天才とは孤独である。

しかし、高尚なる僕を捕まえて、呼び捨てし、雑用せしめ、使い走り同様に取り扱った罰当たりな不届き者があった。
それが不良である。

不良の構成員が、僕を気持悪いと侮辱し、また別の構成員が、深く澄んだ僕の瞳を爬虫類のようだと揶喩したのを、僕は忘れてはいない。

彼ら、神聖なる僕を畏怖するだけの知能さえ持ち合わせてはいないのだ。
例えば、現在、僕の傍に座っている老婆でさえ、僕に畏怖して、気安く話しかけるのを厳に慎んでいる。
無知とは、残酷である。
彼らは、怖いもの知らずなのだ。
僕は、泣く子も黙る○大生なのである。
にも関わらず、彼らは僕に黙らない。
なるほど、彼らは、泣く子ほどの知能さえも有してはいないのだ。

僕が掲げた本から彼らの動静を警戒していると、不良の一方と目が会った。
僕は、ひやりとして即座に目を反らした。
危ない、危ない。
僕ともあろうものが、彼らに脅えている訳ではない。
僕は、筋肉ばかりの体育会系の人種ではない。
知的な文化系に類する人種なのである。

とは云え、文系と早合点されては困る。
頭脳明晰たる僕は、由緒正しき理系なのだから。
云うなれば、彼らが歩兵だとして、僕は参謀なのだ。(注E)

参謀の僕は、再び敵の動静につき偵察した。
目が合った不良が、相方の不良に何やら話しかけて、相方までもが、この僕を鑑識し始めた。
僕は見られている、否、狙われている。

そうして、不良な相方は、僕を見ながら、にやにやと笑った。
人を小馬鹿にした下品な笑い方である。
僕は、小馬鹿にされるのが嫌いだ。
不良二匹が、ひそひそ話をしている。
そうして、二匹して、僕を見たかと思うと、にやにや笑う。
劣悪な笑い方だ。
僕を襲撃する算段をしているようにも思える。

なるほど、奴らが因縁を付けてくるとすれば、僕の読んでいるこの分厚い本だろう。
僕は、そそくさと本を鞄に撤収した。
僕は、臆病風に吹かれた訳ではない。
僕は君子である。
故に、僕は危うきに近寄らない。
無用の争いを避ける為に骨を折るのは君子の義務である。
何故なら、君子でも何でもない奴らは無用の争いを避けるだけの知恵を持ち合わせていないからだ。
それどころか狂暴な奴らには、無用の争いを欲しているような気色さえ見られる。
僕は、無用の争いを避ける為に、愛読書を撤収したが、元より次の駅で下車する予定であったから、不利益がなかったのは勿論のこと、かえって好都合であった。
そのとき、一抹の不安が発生した。

〜〜〜
後半部分を読むにはクリック→〜〜

彼らが現在襲撃を企てているとして、僕を執拗に追跡してきたら、どうしよう。
怯えている訳ではない。
あらゆる事態を想定して、最悪の事態に備えるのが参謀の役目なのである。

よし、駅員の傍にぴたりと居よう。
そうすれば、奴らも手出し出来まい。
我ながら、素晴らしい戦略である。

問題は、駅員の傍に到達するまでのレスポンスタイムである。
駅員の傍に到達する前に、何処ぞ人目の着かぬ処へ引き込まれたら厄介だ。
おそらく次の駅でほとんどの乗客が下車するに違いない。
その群れに紛れて、一刻も早く駅員を発見し、傍に到着する必要がある。

いや、待てよ。

僕の天才的頭脳は、別の角度から、この作戦に一石を投じた。
僕が無事駅員の傍に到着したとして、敵が待ち伏せすることは、あまりにも有り得すぎる。
そうなれば、僕はいつまで経っても駅員の傍を離れる事が出来ない。
これは愈々厄介である。

敵は時間を持て余した暇人であるから、待ち伏せに余念はあるまい。
根競べで負けるはずもないが、如何せん、僕は多忙な○大生なのだ。
暇な無法者とは違う。

まして、○大屈指の優秀に数えられたるこの僕が、遅刻をする訳にはいかない。
僕は将来のある身なのだ。
ミスは許されない。
まして、模範○大生の僕には、迷える堕落○大生に対して手本を示してやる重責がある。
何より教授大先生諸氏の僕に対する信頼に、一点の疑義でも釀すような事があっては言語道断の沙汰である。
僕の単位取得一覧は悉く「優」で装飾されてしかるべきなのだ。

敵の待ち伏せ作戦を見事見破った優秀なる参謀は、同時に作戦変更を余儀なくされた。
敵の標的は、他でもない参謀たるこの僕である。

僕が狙われているのだ。

ならば、敵は、この僕が下車するのを待ち伏せているに違いない。
僕だけが無事に下車して、敵を悉く客車の内に閉じ込める方策はあるまいか。
ちなみに、これは敵前逃亡ではない。
敵は、腕力ばかりが発達した不良である。

しかも、二匹。

がむしゃらに向かっていくのは、愚である。
僕は、参謀なのだから、いついかなる時でも、冷静なる判断を失する訳には往かないのだ。
これは緻密なる作戦である。
無用の争いを回避すると共に、急迫不正の侵害から我が身を守る作戦である。

電車が減速し始めた。
いよいよ到着する。

僕は、平静を装いながらも、迫り来る時に備えて、神経を研ぎ澄ませた。
最重要任務を担って、敵地に乗り込む緊張がある。
僕が成功の階段を登りつめる為には、この難局を切り抜ける必要がある。
ここで玉砕する訳にはいかない。

僕はやれる。

僕はやれる。

僕はやれる。


自分に言い聞かせる。

僕ならやれる。

僕ならやれるんだ。

僕だってやれるんだぁ。

馬鹿にするなぁ。


ついつい興奮してしまって、危うく声を出しそうになり(注F)、はっと気付くと、電車が駅に到着した。
乗降口に下車する乗客が集まる。
僕は、未だ座席に腰かけている。
立ち上がるには時期尚早である。
ここで下車する素振りを見せる訳にはいかない。

ついにドアが開いた。

乗客がぞろぞろ駅へ流れていく。

まだだ。

まだだ。

まだまだ。

下車する乗客に紛れ込む作戦を放棄した僕は、未だ腰掛けたまま、こっそりと敵の様子を伺った。
やはり僕が下車する素振りを見せないものだから、敵にあっても下車する気配は毛頭ない。
なるほど、僕が下車するまで待機している腹積もりなのだろう。
敵は、何やら夢中に話し込んでしまっている。
僕を襲撃する作戦を立てるのに夢中なのだろうか。

僕が、騒音の内に、耳をそばだてて敵をスパイすると、どうも僕を襲撃する算段を会議している風はない。
互いに小さな装置を見せ合い、「アイモード」やら「ピッチ」やらと聞き慣れない専門用語を並べている。
暗号かも知らんと用心するが、不良は、僕の監視を怠っている感さえある。(注G)

しかし、油断は禁物だ。
敵は、あくまで無関心を装っているに過ぎない。
なるほど、僕を油断させて、欺くつもりなのだろう。
不良の分際で姑息な作戦である。

ついに下車する乗客が出払った。
いよいよ作戦決行の時である。

今だ。

ドアが閉まる直前、僕は颯爽と立ち上がり、下車した。
僕が下車したと同時に、申し合わせた如く、電車のドアがぴしゃりと閉じた。
不良は未だ客室の中にある。
僕は、客車に閉じ込められた不良二匹の姿を抜かりなく確認した。
やがて不良を乗せた電車がごとりごとりと発進し始めた。
不良は相変わらず、作戦を立てるのに夢中で、互いに小さな装置を見せ合っている。

僕が下車したことさえ気が付いていないようである。
彼らが僕の座っていた席に目を向けたとき、僕はもうそこには居ないのだ。
僕は、二匹の不良を封印したる電車を見送りながら、にんまりした。

不良を奈落の底まで搬送してくれるような気がした。
それから、達成感が舞い降りてきた。
僕の作戦は見事大成功したのである。
華麗なる作戦に、我ながら、うっとりとなった。

学術的緻密さと芸術的繊細さを兼ね備えた作戦の成功の余韻に浸りながら、僕は、伝家の宝刀を抜いた。
伝家の宝刀とは、乗車定期券である。(注H)

僕は、駅員に、ふっと済ましながら、さりげなく定期券を提示した。
少々キザであったかなと思いながらも悠々自適に駅を後にした。



〜〜〜
注D:はぶられてただけと推測される。
注E:キモトは「僕は参謀タイプだから〜」などと自分のことを語っていた。
注F:キモト氏はしばしば大声でわめくという事件を数回起こした。
   キモト伝説6「うるさい黙れ!」を参照。(http://cost-off.seesaa.net/article/110149550.html

注G:キモトはケータイを持っていないため知識がない。
注H:おそらく定期は乗り降り自由の意味であり、切符とは違うといいたいらしい。
それ以外の注釈:「迷える堕落○大生」は、おそらく俺とS川を指している。
 キモトは単位の「優」が取れないとなるとテストを受けず、テストを受けないと履修記録が残らないのでそれで逃げていた。後日関連記事アップ予定。

S川版キモト伝説「号外!その後のキモト」につづく
http://cost-off.seesaa.net/article/163941450.html

〜〜〜〜
関連記事リンク(ブログ内の記事へ飛びます)
キモト伝説「ノーベル賞2個取る!」
http://cost-off.seesaa.net/article/106256000.html
キモト伝説2「ドイツ語の単位」
http://cost-off.seesaa.net/article/106485722.html
キモト伝説3「彼は使えるよぉ」
http://cost-off.seesaa.net/article/106746075.html
キモト伝説3-1「図書館の地下」
http://cost-off.seesaa.net/article/110234420.html
キモト伝説4「うぃんうぃ〜ん」
http://cost-off.seesaa.net/article/109764817.html
キモト伝説5「キモトのオシャレと最後の砦」
http://cost-off.seesaa.net/article/110184238.html

キモト伝説6「うるさい黙れ!」
http://cost-off.seesaa.net/article/110149550.html
キモト伝説7「何がバッ!」
http://cost-off.seesaa.net/article/112124688.html
キモト伝説8「子供の落書きだぁ」
http://cost-off.seesaa.net/article/112615876.html
キモト伝説9「スケッチ話補足」「スナメリのスケッチ」
http://cost-off.seesaa.net/article/112918319.html
キモト伝説10「京都旅行疑惑」
http://cost-off.seesaa.net/article/114596036.html

キモト伝説11「住吉自然公園」
http://cost-off.seesaa.net/article/114631847.html
キモト伝説12「にしむーVSキモト」
http://cost-off.seesaa.net/article/116965718.html
キモト伝説13「くすの木会館事件」
http://cost-off.seesaa.net/article/118105419.html
キモト伝説14「生態系が把握できない」
http://cost-off.seesaa.net/article/118299365.html
キモト伝説15「木葉、強襲!」
http://cost-off.seesaa.net/article/120500616.html

キモト伝説16「キモト忍法炸裂」
http://cost-off.seesaa.net/article/121631544.html
キモト伝説17「火に油」
http://cost-off.seesaa.net/article/122018689.html
キモト伝説18「第二次キモト宅捜索」
http://cost-off.seesaa.net/article/122429605.html
キモト伝説19「闇に浮かぶキモト城」
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キモト伝説「怒られるよぉ」
http://cost-off.seesaa.net/article/111610463.html
キモト伝説「キモトと麻雀」
http://cost-off.seesaa.net/article/115286827.html
キモト伝説番外編1(ver.2)
http://cost-off.seesaa.net/article/112198342.html
キモト伝説番外編2「キモトとキモト型人間」
http://cost-off.seesaa.net/article/118355154.html

S川版キモト伝説「牡蠣」前編
http://cost-off.seesaa.net/article/111079015.html
S川版キモト伝説「牡蠣」後編
http://cost-off.seesaa.net/article/111082639.html
S川話「キモトの試験逃亡事件」
http://cost-off.seesaa.net/article/161849385.html

『Ouch !、R2、S川版キモト伝説非公開ver.1.2』
http://cost-off.seesaa.net/article/106177456.html
『更新と交信(ver.2)&キモト伝説予告』
http://cost-off.seesaa.net/article/119924581.html

【目次】コラム人物編目次part1
http://cost-off.seesaa.net/article/107966008.html

S川話「軍事衛星が狙ってる」
http://cost-off.seesaa.net/article/100447961.html
S 川話「殺人事件狂騒曲」
http://cost-off.seesaa.net/article/101794742.html
『S川と再会A〜麻薬中毒者の実態〜』
http://cost-off.seesaa.net/article/79954605.html
『S 川と再会B〜沖縄と北海道〜』
http://cost-off.seesaa.net/article/80113889.html

S川話「北海道レポート・日勝峠越え」
http://cost-off.seesaa.net/article/110764241.html
S川作品『ヒバゴン逮捕近し〜千の風〜』
http://cost-off.seesaa.net/article/156071784.html
『コラム人物編目次part1』
http://cost-off.seesaa.net/article/107966008.html


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この記事へのコメント
コストさん
何か小説書いて応募してみては?^^
Posted by とり at 2008年12月13日 09:04
>とりさん いや、このS川版キモト伝説「牡蠣」は、S川が書いてますよ。
「S川版」とか「Sからのメールより」というのは、S川が書いた作品という意味です。
普段のキモト伝説やS川話などの記事は僕が書いてますが、これは例外です。
Posted by コスト at 2008年12月13日 19:30
おおっと、失礼しました。
S川さん、文才あるな〜。
Posted by とり at 2008年12月15日 18:54
普段のキモト伝説は客観的な目線からのキモト、このS川版キモト伝説はキモトの主観的世界観と、その違いをお楽しみください^^
毎回S川とはファミレスでこんな風にキモトの内面を分析していますw

ちなみに改行や文字をでかくする処理は僕がやってますが、「馬鹿にするなあ!」のとこはもう一段階でかくしたかったんですよ、できないのが残念でしたw
Posted by コスト at 2008年12月15日 20:09
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